新学期や新生活が始まって1カ月。SNSでは痴漢被害への不安や経験を訴える声が相次いでいます。実際にどのような被害があるのか。弁護士ドットコムの会員を対象にアンケートを実施しました。(実施期間:4月10日〜4月16日、有効回答数774人)
回答を寄せた男性(468人)の内、1.9%にあたる9人が「痴漢をした経験がある」と回答しました。加害してしまったその理由とは——。アンケートの詳細を紹介します。
●痴漢行為をした経験「ある」1.2%、「わからない」:1.8%
「痴漢行為をした経験はありますか」と質問したところ、「ない」が97%(755人)を占めた一方で「ある」「わからない」もそれぞれ1.2%(9人)、1.8%(14人)いることがわかりました。
「ある」と答えたのは全員が男性で、半数以上が60代以上で、20代以下の回答はありませんでした。また、回答した男性の内、「したことがない」と回答した人が95.7%(445人)、「したことがある」が1.9%(9人)となりました。
また、痴漢行為をしたことがある(加害側)9人の内、「痴漢被害の経験がある」と答えた人が5人(55.6%)いることもわかりました。
●理由は性的欲求が最多、狙う相手が「誰でもよかった」はゼロ
なぜ痴漢行為をしたのか、という質問に対しては、55.6%(5人)が「性的欲求」と回答しました。また「なんとなく」(33.3%、3人)「魔が刺した(22.2%、2人)」も回答が上がる一方、「性的コンテンツに影響を受けた」や「嫌がらせ」「他の人もやっていたから」といった回答はありませんでした。
どこで痴漢行為をしたかという質問に対しては、電車が55.6%(5人)、バスが44.4%(4人)などの公共交通機関が多く、学校内という回答も22.2%(2人)いました。また、この設問では、路上はゼロという結果になりました。
どのような相手を狙ったか、という質問では66.7%(6人)が「たまたまそこにいた」という回答となりました。他には「制服を着ている」や「抵抗しなさそう」という回答がありました。「露出度が高い」や「誰でもよかった」という回答は0人でした。
痴漢行為をした回数については「一度だけ」が55.6%(5人)で最多、次に10回未満の33.3%(3人)となり、11.1%(1人)は100回以上という結果になりました。今回の調査では、10回〜99回という回答はありませんでした。
続いて、痴漢行為をした動機や状況について質問しました。
「好奇心としかいいようがナイ。性的なものではなかった。相手は可愛い女子高生で、バスを降りるさい、当方を笑顔で見た。直截触れるのではなく、耳にそっと息を吹きかけた」(70代以上・男性) 「混んでいて密着していた。手が乳房に当たった」(60代・男性) 「夜に酔って電車で座っていたときに、隣に座っている女性の足を、コート下から手を入れ触った」(60代・男性) 「混雑時の手の甲間近にタイトスカートの臀部が当たりそうだったので、揺れに乗じて何度か手の甲を触れた。スーパー通路ですれ違いが窮屈な時、スキニージーンズの股間に手の甲を押し付けた。レジで並んでいる時、後ろの人の胸に強く当たった」(60代・男性) 「若い性欲を持て余している年代に、張り出た臀部を押しつけてきたから」(70代以上・男性)
●「痴漢被害にあった」は全体では4割、女性では8割超え
痴漢被害を受けたかの質問には、41.3%(320人)が「ある」、55.6%(430人)が「ない」、3.1%(24人)が「わからない」と回答しました。痴漢被害を受けたと回答した人のうち、男性は22.5%(72人)、女性は75.9%(243人)となりました。
アンケートに回答した男性全体では、「痴漢被害を受けたことがある」と回答したのは15.5%(72人)になりました。回答した女性全体では「被害を受けたことがある」という回答は、81.3%(243人)にのぼりました。
●痴漢被害、場所では「電車」 年代では若ければ若いほど多い結果に
被害を受けた場所について、最も多かったのは「電車」で74.0%(236人)となりました。その他には「路上」37.9%(121人)、「商業施設内」16.6%53人)、「公共施設内」「バス」がともに7.5%(24人)でした。
被害に遭った年代では、10代が65.6%(208人)で最も多くなり、次いで20代の59.6%(189人)となりました。30代以降では半分を下回ったものの、70代以上までの各年代全てで「被害に遭ったことがある」という結果となりました。
被害にあった状況としては、以下のようなコメントが寄せられました。
<男性の被害体験>
「身長が低く華奢だったため、女性と間違えられたのか、痴漢にあった。列車でしつこく触られた」(20代、被害に遭ったのは20代) 「映画館で立ち見中に、高齢男性に股間を触られた」(60代、被害に遭ったのは10代) 「高校生の時に、満員電車で40-50代と思われる男性、別の時には30-40代と思われる女性から股間を触られるという経験をしました」(40代、被害に遭ったのは10代の時) 「満員電車内で体を寄せられて陰部を触られた。映画館内で隣に座ってきて、陰部を触られた」(60代、被害に遭ったのは10代、20) 「隣に座った男にポルノ画像を見せられた」(30代、被害に遭ったのは10代)
<女性の被害体験>
「スカートの中の写真を撮られたことがある。別のときに都内の超満員電車で固いものを臀部に押し付けられたことがある。動けなかったし抵抗も声も出せる状態ではなかった」(40代、被害に遭ったのは20代) 「横断歩道待っていたら私の前にいた男が後ろに移動し背中にぴったりくっついてきた。 店の中でずっとついてくる男がいた。路上で歩いてたらついてくる男がいた」(20代、被害に遭ったのは10代、20代) 「電車内にて、他の乗客の死角となる場所でお尻を触られた」(20代、被害に遭ったのは10代) 「パチンコ店で働いている時に、すれ違いざまに客に触られたりした」(40代、被害に遭ったのは20代、30代) 「本屋で立ち読みしていたところスカートをまくられお尻を触られた電車でカバンを両手持ちしていたところ、向かい合った状態で両手の間に股間を擦り付けられ、逃げようとしたところ腕を掴まれた」(40代、被害に遭ったのは20代) 「10代…塾に行くため、道を歩いていると、前から来たサラリーマン風の男性にすれ違いざま、お尻を触られた。20代…普通に通勤の満員電車で、体を触られた」(50代、被害に遭ったのは10代、20代、30代) 「通勤電車(人と体が当たらない程度の混雑)で吊り革に捕まっていると、背後からお尻に股間を擦り付けられた」(20代、被害に遭ったのは20代車) 「満員電車の中で複数人からあちこちを触られたり、空いている電車で隣に立たれて手を握られたりしました」(50代、被害に遭ったのは10代) 「小学生の頃は帰宅時に、おじさんが卑猥な言葉を言ってニヤニヤしながら自転車でつけまわされた。高校大学の頃は電車でたびたび痴漢にあった」(30代、被害に遭ったのは10代、20代、30代) 「夜行バスで足を執拗に触られた」(20代、被害に遭ったのは10代) 「小学4年生くらいのとき、友人と公園で遊んでいたところ、不審者が接近してきた。「仲間に入れてほしい」「テニスを教えてあげる」「筋肉があるかどうか確かめてあげる」と言い、服の中へ手を入れて、脇から胸を触ってきた」(30代、被害に遭ったのは10代) 「バイト帰り、深夜の人気のない路上を歩いていたら、後ろから来た自転車に乗ったおっさんに追い抜き様お尻を触られました」(30代、被害に遭ったのは20代) 「電車を降りようとした時、乗り込んできた男がすれ違いざまに私の陰部を服の上から思いっきり掴んできた。「え?」と思った時には私は電車を降りていた」(30代、被害に遭ったのは20代の時) 「10代以下です。私立の小学校に通っていた小学校1年生から何回か痴漢にあっていました。満員電車だし、低学年の子どもも狙われます。都内で電車通学している子供はほとんど被害にあったことあるんじゃないでしょうか。子供だけどよくないことだ思って親とか大人に言わないのです」(40代、被害に遭ったのは10代の時、場所は電車、路上) 「小学生から40代まで、数え切れない程被害に遭いました。今もトラウマとして残っています。神社の境内、路上、電車の中、書店、その他色々な場所で。特に電車の中は100回を超えていると思います」(60代、被害に遭ったのは10代〜40代)
加害者が軽い気持ちで痴漢行為をしているのに対し、被害者たちは時間が経過しても忌まわしい記憶に苦しんでいることがわかりました。10歳未満で被害にあった人もおり、車内カメラの設置など痴漢を撲滅するための整備を進めることが望まれます。