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母に変化の兆し 2世小川さゆりさんの会見に戸惑う「なぜ娘にこんなことするの?」 脱会日記(中)

母に変化の兆し 2世小川さゆりさんの会見に戸惑う「なぜ娘にこんなことするの?」 脱会日記(中)

(安倍晋三元首相の銃撃事件以降、旧統一教会の被害を訴える相談が相次いでいます。弁護士ドットコムニュースは、ある信者家族の3カ月を取材。30代男性に、60代の母親が脱会するまでの軌跡を語ってもらいました。母ヨウコさんは30年以上、旧統一教会に入信しています。サークル活動程度と目をつぶってきた子どもたちは、7月、母の脱会に向けて立ち上がります)

脱会日記・上「銃撃事件を機に始まった家族全員の苦闘3カ月」
脱会日記・下「ついに統一教会と連絡を断った母、アベルから再三の反論」

8月末、私たちは焦っていました。

相談してから1カ月、否定してはいけないとの話を受けて、一生懸命、母ヨウコの統一教会に入ったきっかけの悩みを聞きました。強権的な父が怖かったこと、娘が不登校になって心配だったこと…子を育てる親となった私たちも悩みは理解できると共感しました。でもお母さんが心配だと伝えました。

しかし「考えてみるわね」と言った翌日には、また教会に行ってしまうということが続いたのです。教会員の仲間には、子どもから説得されていると逐一報告をしていたようです。

●経験者の話を聞いて目標が見えた

「全国統一協会被害者家族の会(略称:家族の会)」の相談会が開かれると聞き、わらにもすがる思いで、また家族みんなで出かけました。聞きたいことをノートにびっしりメモして行くと、会場は想像以上に多くの人たちがいました。

2003年に発足したこの会には、脱会経験者やその家族、支援者の方たちが多くいらっしゃいます。この日は事件後初ということもあり、テレビカメラがずらっと並んでいて、テレビで見ていたジャーナリストの鈴木エイトさんもいました。

圧倒されながらも、私たちの目的は明確でした。今どうするべきか、これからどうするべきか。先の見えない道のりが苦しく、経験者はどういうプロセスを踏んでいったのか、それは何カ月、何年というスパンなのかを知りたかったのです。

体験談を聞くことは重要でした。経験者によると、今は気づかせる段階、考える段階なのだといいます。信仰8割、「なんか変だな」と思っているのが2割だとすれば、少しずつ4割を目指せばいいと。どうしても先を急ぎ、自分たちだけで悩んでしまう私たちに、脱会した方やそのご家族の話は助けになりました。

●テレビ報道で揺らぎ始めた信仰

9月、母と大きなけんかをしました。これまで「お母さんが心配だ」「お母さんのことも、友達のことも責めていない」と根気よく話を聞いていましたが、「お金は神にささげたから返せない」「原理講論を学んでないから分からない」などと信者であることを辞める気配が一切ないように思えて「もう知らないよ!」と言ってしまいました。

マインドコントロールを解くのは、牧師さんとの対話で教義の矛盾をつく必要があります。まだその段階にいけず、思ったよりも簡単じゃないと分かって悔しかったんです。母は純粋で素直です。寄り添う姿勢を見せるため、妹が母と一緒に日曜礼拝に行くと言ってくれました。母もノリノリだったのですが、直前になって教会側から断られました。

「誰でも来ていいと言っていたのに、おかしくないか?」と言うと、母も戸惑っていました。このころ、母は「脱会させようと、家族が拉致監禁する」などと教育されていたようです。母が少し疑問を持つと、向こうも対処してくるという「いたちごっこ」でした。

それでも10月になると、徐々に変化が見え始めました。

テレビで統一教会の信者になった娘のことを気に病み、自殺してしまった女性の話を報じていました。また、元2世信者の小川さゆりさん(仮名)の会見も見ました。教会側から両親の署名入りで会見を止めようとしたことについて「家族を思う気持ちがあったら、こんなことしないだろう?」と言うと、母からは「もし本当だったらびっくりだね」と返ってきました。

数日後、私たちきょうだいとその配偶者や子供、伯母で家族会議を開きました。教会との連絡を断つための「Xデー」です。午後9時から夜が明けるまで話し合いました。

「お母さんにとって、家族と教会、どっちが大事なの?」

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