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メニュー写真と全然違う「ガッカリなランチ」返金は可能? 残念すぎる「鮭いくら丼」に大ショック
看板写真の「鮭イクラ丼」(左)と実際の「鮭イクラ丼」(女性提供)

メニュー写真と全然違う「ガッカリなランチ」返金は可能? 残念すぎる「鮭いくら丼」に大ショック

お店でご飯を頼んだら、メニューの写真と全然違うものが来たという経験はありませんか。「お店で頼んだ『鮭イクラ丼』に思わず目を疑った」という女性が、困惑した様子で弁護士ドットコムニュースに情報を寄せました。

お盆の時期で休業しているところも多く、やっとの思いで見つけた海鮮丼のお店。イクラが大好きな女性は、たっぷりイクラが乗った「鮭イクラ丼」(1027円)の写真に心をおどらせて入店しました。

しかし、注文して出て来た丼をみて唖然。鮭イクラ丼というよりも、鮭フレーク丼にイクラが「添えられている」ような丼でした。女性は当時を振り返る。

「味はまあ、おいしかったですよ。鮭フレークって安くて美味しいのが魅力じゃないですか(笑)。でも、鮭フレークならスーパーで買って家で食べれますもん。私はイクラが食べたかったんです…」

あとから店の口コミをみてみると、「イクラの量は入口の写真の三分の一以下」といった投稿も。女性は「やっぱり店の口コミはちゃんと確認しないといけないですね」と今後気をつけると決意しました。

店のメニューには、「写真はイメージです」と書かれていることもあります。果たして、写真と実物があまりにかけ離れていた場合、返金してもらえるのでしょうか。鈴木義仁弁護士に聞いた。

●明らかに分量が少ない場合「提供義務違反」に

ーーメニュー写真と実物がかけ離れていても、法的にOKですか?

お客さんとお店との間では、お客からの「鮭イクラ丼」という商品の注文(申込み)に対して、お店がその注文を受ける(承諾)ことによって、「鮭イクラ丼」を提供することについての契約が成立することになります。

その結果、この契約に基づき、お店は、「鮭イクラ丼」をお客さんに提供する義務を負い、お客は、商品代金を支払う義務を負うことになります。

お店としては、メニューに「鮭イクラ丼」の写真を掲載していますので、いくら「写真はイメージです」と注記してあったとしても、メニューに掲載されている写真と同等のものをお客さんに提供する義務を負っているものと考えられます。

したがって、メニューに掲載されている写真と比べて明らかに分量が少ないということになれば、料理の提供義務違反となり、お店は債務不履行責任を負うことになります。

ーー写真と明らかに違う場合、返金してもらえるのでしょうか

さすがに「イクラの量は入口の写真の三分の一以下」ということであれば、お店の債務不履行として、お客さんは注文のキャンセルができ、代金の支払いを拒むことができます。

また、お客さんは、メニューに掲載されている写真のような分量だと思って注文したのであって、メニューの写真と比べて明らかに分量の少ないものであれば注文しなかったでしょうから、錯誤(民法95条本文)に基づき、当該注文をキャンセルしたり、料理代金を支払わないと主張することも考えられます。

以上は、実際に出された「鮭イクラ丼」を見ただけで食べなかった場合です。

●食べたら了承したことになってしまう

ーー写真とちょっと違うなと思いながらも、「鮭イクラ丼」を食べてしまった場合はどうなりますか

こんなはずじゃなかったと思いながらも、「鮭イクラ丼」を食べてしまった場合は、お客さんは、メニューの写真とは異なる「鮭イクラ丼」の提供を了承したことになってしまいます。そうすると残念ながら、債務不履行や錯誤を主張することができず、料理代金を支払わなければなりません。

したがって、もしも、メニューの写真とは異なる料理が出てきた場合には、その料理を食べる前に、注文をキャンセルするか、メニューの写真と同等の料理を提供するよう主張する必要があるでしょう。

いくら「写真はイメージです」と注記してあったとしても、「イクラの量は入口の写真の三分の一以下」ということが常時行われているとすれば、このお店は、「鮭イクラ丼」という商品の内容について実際のものよりも著しく優良であると消費者(お客)を誤信させていると考えられるので、「不当景品類及び不当表示防止法」(景表法)にも違反する可能性があります。

その場合には、消費者庁長官や都道府県知事が、お店に対し、一般消費者に与えた誤認を排除すること、その行為の差止め、再発防止のために必要な事項などを命じること(措置命令)ができ、その他の要件を充たすと課徴金納付命令まで出されることになります。

プロフィール

鈴木 義仁
鈴木 義仁(すずき よしひと)弁護士 法律事務所横濱アカデミア
元神奈川大学大学院法務研究科教授。前横浜市消費生活審議会会長。著書に「悪徳商法にご用心」(共著:日本評論社)、「訴える側の株主代表訴訟」(共著:民事法研究会)「くらしの法律相談ハンドブック(共著:旬報社)」

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