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コンビニ「見切り販売」、まだ残る本部の圧力 公取注視の実態、録音を入手
公正取引委員会(kpw / PIXTA)

コンビニ「見切り販売」、まだ残る本部の圧力 公取注視の実態、録音を入手

公正取引委員会(公取)がコンビニの実態調査を検討している。6月4日、毎日新聞が報道し、各紙が後追いした。公取の企業取引課によると、毎年業界を決めて調査しており、コンビニ業界が候補になっているという。

公取は、期限切れが迫った商品を値引きする「見切り販売」を制限したとして、2009年に独占禁止法違反(優越的地位の濫用)でセブンイレブンに排除措置命令を出している。

また、最近の国会でも、時短営業の拒否(4月17日、参院経済産業委員会)、特定地域に集中出店する「ドミナント戦略」(5月16日、同)について、独禁法違反になる可能性を示唆した。調査するとなれば、これらも対象になるとみられる。

今、コンビニ本部はこれらの問題について、加盟店とどのように向き合っているのだろうか。弁護士ドットコムニュースに寄せられたオーナー3人の声を紹介したい。3人は別々の大手チェーンで、いずれも4月以降の出来事だ。

●時短容認も「夜間スタッフ必要」でメリットなし

あるオーナーは本部の経営相談員から、時短営業についての説明を受けたという。

大きなポイントは3つ。(1)本部への支払いが増える、(2)夜間の配送は継続、(3)配送を受けるために夜勤が1人いる。

どの大手も24時間営業にすると、オーナーに金銭面でのサポートがある。24時間をやめるのだから、ロイヤリティーが増えるなど、本部に納める金額が増えるのは仕方がない面もあるだろう。

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ただ、このオーナーが不満に感じているのは配送の部分だ。

加盟店の利益が減るとしても、休む時間がとれ、人件費を削れるのならメリットはある。しかし、スタッフが必ずいなければならないのなら、人件費は24時間営業しているときとあまり変わらない。むしろ営業していれば、わずかでも売上はある。

「時短をしても人件費は減らないのに、オーナーの収益は減る。これでは時短したくても、する意味がないように感じます。本部は『時短を認めて、オーナーの負担を少なくしています』という風にアピールしていますが疑問です」

コンビニの配送を担うトラック業界も、人手不足や過重労働が問題になっている。配送の調整は容易ではない。だが、形式だけ時短を認めても、これでは負担軽減とは言えないのではないか。配送を変えられないのなら、そのことを前提に支援策を考える必要がある。

●ドミナントで月の収益が30万円減る、「家族路頭に迷う」

別のオーナーはこの春、店の近くに同じチェーンの新店を出されたばかり。

「今のところ、日販は10万円以上減っています。月にすると、店の利益が30万円以上減る計算です。いつまでこの状況なのか不安しかありません」

新店の計画があると知らされたのは半年ほど前。本部の担当者に見直しを求めてきたが、聞き入れてはもらえなかった。

「売上がなかなか伸びず、開店時の借金を返せないどころか、貯金が減る一方でした。この1年ほど売上が平均に近づき、ようやく余裕が出てくるかなと希望を持ち始めたところでした。心が折れましたよ」

そんなオーナーに本部がしたアドバイスは「生活費を減らせ」だったという。

「人件費を削るため、休みなしで働いている。それでも生活はギリギリ。貯金がないから、いざというときに出せるお金がない。もう自己資本金を割っても補填するお金がない。このままだと、一家路頭に迷うしかない」

●見切り販売「『しないでください』とは言えませんが…」

3人目のオーナーはこの春、本部に見切り販売をしたいと打ち明けた。しかし、本部側は「店に決定権がある」とは言ったものの、データを示すわけでもなく「店舗価値が下がる可能性がある」と繰り返し、渋り続けた。

「やめろ」と言っていないだけで、圧力をかけているのは明らかだ。セブンの見切り販売制限に排除措置命令が出てから10年。キャンペーン以外で弁当類の値引きが広がらない背景の1つに、本部側のこうした姿勢があると考えられる。

確かに、見切りが万能ではない可能性はある。だが、逆効果だと思うのなら、具体的な根拠を示せば良い。そうすればオーナーに疑念を抱かせなくて済むはずだ。やり取りから伝わってくるのは、本部が見切り販売を迷惑がっているということだ。

このオーナーは「ああいう風に言われたら、今後何をされるか分からないので見切りなんてできないですよ」と話す。

以下、録音から主なやり取りを紹介する。

【主なやり取り(特定を避けるため、一部表現を改めています)】

オーナー「見切り販売をしたいんですけど」

本部「お店に決定権があるので、『しないでください』と言うことはできないんですが…。ただ、オーナーさんの都合を優先して店舗運営してしまうと、オーナーさんにとってもプラスにはなりませんよ」

オーナー「見切り販売で、利益が増えたというニュースも出ているじゃないですか。少しでも利益を多くしたいんですけど」

本部「見切り販売を『絶対にしないでください』とは私どもからは言えません。

ただ、店舗価値をオーナーさんの都合で下げてしまうことがあったら、オーナーさんにとってもプラスではないんですよね。それをご理解いただけませんか。店舗の価値を下げてしまうと、お客様が離れていく可能性は十分あります」

オーナー「じゃあ、できないってことですか。やってはいけないことですか」

本部「ご判断にお任せします」

●公取のコンビニ調査、実施なら本部を通さない形に

なお、コンビニの調査では、経済産業省も2018年12月〜2019年3月にかけて、アンケートを実施。加盟店に対し、人手不足の状況や契約更新をしたいかなどを尋ねた。

結果は4月に発表され、前回調査時から加盟したことに「満足していない」とする回答が大幅に増え、約4割になった。

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この調査は、⽇本フランチャイズチェーン協会(JFA)を通して、加盟8社の本部からオーナーに依頼するものだった。

しかし、今年2月、弁護士ドットコムニュースが各社に状況を尋ねたところ、その時点でローソンが告知をしていなかった。その後、アンケートは告知不足から締め切りを1カ月ほど延長したが、最終的な回答率は37%だった。

結果が報道されたあと、あるオーナーは弁護士ドットコムニュースのLINE@に「全店対象のアンケートだとネットで見て驚きました。担当者に確認したところ、『忘れてました』で済まされました」とメッセージを寄せた。本当に十分な告知はされていたのだろうか。

ちなみに公取の担当者によると、仮にコンビニの調査を実施することになったときは、本部を通さない形になるとのことだ。

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