痴漢対策として安全ピンを刺す女性について、ネットでは議論が続いている。安全ピンは何十年も前から使われてきた痴漢撃退法だ。しかし、Twitterをきっかけに注目を集めると、一部の男性を中心に「安全ピンで刺すのは過剰防衛」「傷害罪だろ」という強い批判があった。ケースバイケースではあるが、実際には「若干の出血を伴う程度の安全ピンの攻撃は正当防衛の可能性が高い」という弁護士の見解もある。
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一方、この問題で明るみに出たのは、痴漢された被害女性はさまざまなトラブルに巻き込まれる可能性があるということだった。そうした状況を見ていた弁護士がいる。Twitterでは、「大阪名物パチパチ弁護士」と名乗っている男性弁護士だ。
大阪名物パチパチ弁護士は5月28日、Twitterでこんな呼びかけをした。
「とりあえず、ワシは『痴漢を安全ピンで刺した女性がトラブルに巻き込まれたとき対策弁護団』を今設立した。 無償で弁護したる。 弁護団員も大募集中や。 このツイート拡散したら、痴漢被害減るかなあ。 減ってほしいわ」
このツイートは大きな反響を呼び、きっかけに、本当に15人の弁護士による弁護団が結成された。一体、何を目的にどのような活動をするのか。呼びかけ人である大阪名物パチパチ弁護士にメールで取材をした。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)
●「安全ピンを刺すのはよくない」より、まず痴漢をなくすことが大事
ーー「痴漢を安全ピンで刺した女性がトラブルに巻き込まれたとき対策弁護団」を設立した理由を教えください。
「なんかTwitterで、『痴漢を安全ピンで刺すこと』の是非ということが議論されてたのを見てたんや。
でもな、そんなこといっても、安全ピンで刺して痴漢行為で自衛するしかない女性もいるやん。そんな女性に『安全ピンで刺すのはよくない』といっても、じゃあ泣き寝入りしろってことか。そんなことより痴漢行為をなくす方が大事なんちゃうんか。
と思って、勢いで弁護団を設立したんや」
ーーTwitterでは、全国各地の弁護士が弁護団に名乗りをあげていらっしゃいますね。すべてTwitter経由でしょうか?
「今のところ15人。すべてTwitter経由で、高木良平弁護士が代表や」
ーー弁護団に参加していらっしゃる弁護士の方々はそれぞれ立場が異なるようにも思えますが、共通する目的とは?
「共通する目的は痴漢撲滅や」
ーー弁護団では、「痴漢の被害に遭われた方が、ご自分に対する痴漢行為を停止・終了させるために安全ピンを用いて反撃し、それがもととなって法的トラブルに巻き込まれた場合に、そのトラブルに対処する」そうですが、具体的にはどのようなケースを想定していますか?
「『安全ピンを刺した男性から損害賠償などを請求された場合』と『捜査機関に犯罪の嫌疑をかけられた場合』や」
ーー女性が痴漢対策として安全ピン(あるいは待ち針やカッターなど小さくて鋭利なものの場合も)を持ち歩くことは、私の経験から少なく見積もっても30年ぐらい前からあったことだと思います。しかし、弁護団を作らなければならないほど、ネット上で男性は安全ピンになぜ脅威を感じているのでしょうか?
「完全にワシの私見やで。 Twitterやってる男性の一部は、女性が痴漢を嫌がってたり、怖がってるのを面白く感じてるんちゃうかな、と思うねん。そやし、様々な正当な理由を考えて、痴漢に対する抵抗をさせないように『安全ピンなんかで刺したらあかん』などという意見を述べてるんやと思うねん。
ただな、痴漢っていうのは、Twitterやってる男性の一部が感じるほど安易で軽い犯罪やない。女性を心理的・精神的に傷つけ、強い精神的苦痛を感じさせる行為や。
そやし、防衛のために、女性が行動したら、支援せんと、と思うんや。
質問の回答に戻るけど、ワシは特にネット上で男性は安全ピンに脅威を感じているとは思えん。ただ、『安全ピンなんかで刺したらあかん』と反論しないと気が済まない人たちが様々な反論を考えて述べているんとちゃうかな」
ーーあらためて、痴漢被害に遭っている女性たちに対してメッセージはありますか?
「これもワシ個人の意見や。
メッセージは述べたくない。今すぐ痴漢被害なんかなくなってほしいからや。あと、犯罪被害者の気持ちは様々や。安易な励ましとかかえって傷つけるおそれがある。だからメッセージは言わん。
ただ、トラブルに巻き込まれたときは、全力でできることをやるのみや」
ーー弁護団設立で、一般の方からの反応で心に残ったものがあれば、教えください。
「『こんな弁護士を待ってました』というのが一番うれしかったな。意見を言うだけでなく、行動できるのが弁護士の強みやし、評価してもらえてると思ったわ」
ーー弁護団の今後の予定は?
「弁護団の広報などの方法を検討しとる。 トラブルの相談があれば取り組んでいくけど、今は、そんなトラブルなど起こらないように祈っとる」
●もしもトラブルに巻き込まれたら…?
弁護団では、受任する法律事務などの詳細や、弁護団への連絡方法について「安全ピントラブル対策弁護団」のホームページを設置している。