大学の学部廃止を理由に解雇したのは不当だとして、淑徳大学の無期雇用の教授3人が学校法人「大乗淑徳学園」(東京都・板橋区)を相手取り、教授としての地位確認や賃金の支払いを求めていた訴訟で、東京地裁(春名茂裁判長)は5月23日、解雇無効として、原告の請求をほぼ全面的に認める判決を言い渡した。
●「学部廃止」に先駆けて「解雇通告」
判決などによると、大乗淑徳学園は2013年12月、淑徳大学国際コミュニケーション学部の廃止(2017年3月)に先駆けて、同学部の専任教員12人に対して、希望退職を募集した。同時に、もし希望退職しない場合は、学部廃止時点で解雇すると通告した。
解雇通告を受けた教員のうち3人(原告)が、労働組合を結成して、団体交渉を申し入れていたが、学園側は交渉拒否などの対応をとっていた。学園側が2017年3月、通告どおりに解雇したため、この教員3人は同年4月、地位確認などを求めて東京地裁に提訴していた。
●解雇権濫用で「無効」と判断
東京地裁の春名裁判長は、学園の財務状況が相当良好であったこと、国際コミュニケーション学部廃止と同時に新設が決定された人文学部で、原告側が担当可能な授業が多数設けられたことなどから、「学部廃止に伴う人員削減の必要性は高度であったとはいえない」と指摘した。
さらに、「学園が、解雇回避の努力を尽くすこともなく、説明や協議を真摯におこなうこともしなかった」として、原告3人の解雇について、「解雇権を濫用したものであり、社会的相当性を欠くものとして、無効である」と判断した。
●学園側「承服しがたい理由のある結果」
原告のジグラー・ポール氏ら3人と代理人は、この日の判決後、東京・霞が関の厚生労働記者クラブで会見を開いた。
原告の1人は「何よりも自分の生活を安定できるということで、心からホッとしている」「日本の私学の状況をみていると、こういう判決が出たのは良かったと思っている」「おかしいことはおかしいと言っていきたい」と話した。
大乗淑徳学園は、弁護士ドットコムニュースの取材に「学園としては、承服しがたい理由のある結果であったため、控訴を検討しております」とコメントした。