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上司の口癖「死ねばいいのに」に涙する日々、全く悪気がなくてもパワハラ?
写真はイメージです(mits / PIXTA)

上司の口癖「死ねばいいのに」に涙する日々、全く悪気がなくてもパワハラ?

「『死ねばいいのに』が口癖の上司がいます。とても不快です」。インターネットのQ&Aサイトにこのような投稿が複数寄せられている。

お笑い番組の影響で、ギャグのつもりで「死ねばいいのに」と口に出す人もいる。一方で、ギャグとは思えず、不快な気持ちになったり、傷ついたりしている人も少なくない。

この投稿の場合、投稿者は「死ねばいいのに」と上司から言われる度に涙が出そうになるという。

別の投稿者は、初めてのアルバイト先で「死ね」が口癖の店長に悩んでいるようだ。「ミスをすると『死ね』『殺意がわく』などと言われます。このような言葉は人に言ってはいけないと思っていたので、店長の言葉に衝撃を受けています。我慢するべきなのでしょうか」と投稿者は戸惑いを隠せない様子だ。

単なる口癖で、何の悪気がなかったとしても、上司が部下に「死ね」「死ねばいいのに」と発言することはパワハラにあたるのだろうか。西山 良紀弁護士に聞いた。

●パワハラに該当する可能性が高い

ーー上司が部下に「死ね」「死ねばいいのに」と発言することは、悪気がなかったとしてもパワハラにあたるのでしょうか

「パワハラに該当する可能性が高いと思います。

法律上の明確な定義はありませんが、『パワーハラスメント』とは、一般的に『同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為』(職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議)を指し、不法行為に該当します。

そして、パワハラに該当するか否かは、部下が『パワハラ』と思えば直ちに『パワハラ』というように部下の一方的な判断で決まるわけではなく、一般人であればパワハラと評価するか否かで判断することになります」

ーー上司の言葉はたとえ口癖であったとしても、「業務の適正な範囲」を超えているということですね

「はい。『死ね』『死ねばいいのに』という言葉は、人格を否定する言葉であり、悪気がなくても、一般人であれば、嫌な気持ちや辛い気持ちになると思います。

また、業務上の指導に『死ね』『死ねばいいのに』と人格を否定する言葉を使う必要はなく、上司の発言は、業務の適正な範囲を超えていると思います。

以上、悪気がなくても、上司の『死ね』『死ねばいいのに』という発言はパワハラであり、不法行為に該当する可能性が高いと思います。

なお、上司のパワハラは、会社も使用者(雇主)としての責任や職場環境配慮義務違反の責任を負う可能性があります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

西山 良紀
西山 良紀(にしやま よしのり)弁護士 リライト神戸法律事務所
兵庫県弁護士会所属。 離婚・男女問題、遺産相続、労働問題、債権回収などを多く扱う。 昼食の大半はラーメン。鶏がら・豚骨から出汁をとってラーメンを自作することもある。独立する際に、前所属事務所からもらった餞別は寸胴鍋とオリジナルラーメン鉢。

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