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製薬・営業職男性の「懲戒解雇」無効判決「処分はしかるべきだけど、クビはやりすぎ」
原告の山口浩治さん(右)

製薬・営業職男性の「懲戒解雇」無効判決「処分はしかるべきだけど、クビはやりすぎ」

英国に本社を置く大手製薬会社アストラゼネカに勤めていた50代の男性社員が、不当な理由で懲戒解雇されたとして、会社を相手取り、社員としての地位確認と未払い賃金の支払いなどを求めていた訴訟の判決が10月27日、東京地裁であった。石川真紀子裁判官は「懲戒解雇は無効」とする判決を言い渡した。

判決文などによると、原告の山口浩治さん(54)は1988年4月、同社の前身アイ・シー・アイファーマ社に正社員として入社。それ以降、営業職(MR)などとして働いていた。山口さんによると、2015年7月ごろ、一方的な減給や上司によるパワハラ行為があったため、人事部に通報したところ、勤務内容のあら探しがはじまったという。

山口さんは2015年11月、懲戒解雇された。2016年2月、懲戒解雇は不当だとして、労働審判を申し立てた結果、(1)山口さんを復職させること、(2)会社が山口さんに一定の解決金を支払うこと――という審判が下されたが、会社側が異議を申し立てたため、裁判に移行していた。

●東京地裁「社会通念上相当と認めることはできない」

会社側が、山口さんを懲戒解雇としたのは以下の理由だ。

(1)営業が医師に薬について説明する「テレビシンポジウム」をめぐり、実際に参加していない医師が参加したと報告していた

(2)実際に訪問していない医院を訪問したと活動報告していた

(3)上司や同僚のコンプライアンス違反など虚偽内容を同僚にメールで送信した

(4)経費を二重精算していた

一方、山口さん側は、(1)の一部については認めながらも、(2)〜(4)については、故意はなかったなどと主張していた。

東京地裁の石川裁判官は判決で、故意はなかったとしながらも、一部については「重大な過失」があったと認定した。相応の懲戒処分を受けてしかるべきとしたが、「社会通念上相当と認めることはできず、懲戒権の濫用したもの」と判断して、懲戒解雇は無効だと結論づけた。

●山口さん「復職したい…」

山口さんはこの日の判決後に東京・霞が関の厚生労働記者クラブで会見を開いた。判決を受けて、「正直ホッとした。この会社でずっと働いてきたので、復職したい。家族ともども人生に関わることなので、正当な会社になってもらいたい。今後も会社で働いて、後輩のためにもいい会社になるようにがんばっていきたい」と述べた。

アストラゼネカをめぐっては、退職勧奨を断った社員が降格や減給されたり、追い出し部屋へ配転されたりしたなどとして、裁判で争っているほか、妊娠出産した女性従業員が「降格されたのはマタニティハラスメントにあたる」と提訴を検討するなど、労働問題をめぐる争いが相次いでいる。

アストラゼネカは、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「当社としては、一定の理解は得られたものの、最終的に主張が認められなかったことを不服とし、すみやかに東京高等裁判所に控訴する手続きを行いました」とコメントした。

(弁護士ドットコムニュース)

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