三菱電機の新入社員の男性(当時25歳)が自殺したのは、上司や先輩から継続的にいじめ・嫌がらせなどを受けていたにもかかわらず、会社側が適切な自殺予防措置を講じなかったことが原因だとして、男性の両親が9月27日、会社を相手取り、計約1億1800万円の損害賠償をもとめて東京地裁に提訴した。
●上司や先輩社員の名前をあげた遺書が残されていた
訴状などによると、男性は大学院卒業後の昨年4月、三菱電機に入社した。同年6月、兵庫県尼崎市にある施設内の部署に配属された。同年9月から本格的に業務に携わりはじめたが、そこで上司や先輩社員から継続的にいじめ・嫌がらせ、工数の付替えの指示を受けていたという。
男性は同年11月、「私は自殺します。私は三菱につぶされました」という遺書を残して、社員寮で自殺した。遺書には、上司や複数の先輩社員の名前をあげているほか、何のサポートも受けられない嫌がらせや、仕事に関する質問に答えられないと非難されるといったいじめを受けていたことが書かれていた。
男性の自殺について、両親は、会社側に対して問題の究明や謝罪などするようにをもとめた。だが、会社側からは、遺書に書かれたいじめなどが「一切なかった」という回答があったため、両親は今回の提訴に踏み切った。
●遺族側代理人「会社の回答はきわめて誠意がなかった」
提訴後、両親と代理人が東京・霞が関で記者会見を開いた。男性の母(40代)は「入社してわずか8カ月余りで、なぜ息子は命を落とすまで追い詰められたのか、その理由が知りたい。二度とこのようなことが起こらないようにしてほしいという思いから、裁判に踏み切りました」と話した。
遺族側の代理人をつとめる嶋崎量弁護士は「三菱電機とはこれまで書面でやりとりした。きわめて誠意がない回答だと思った」「彼の心の痛みは、心のある人間が(遺書を)読めばわかるはずだ。それを否定して、具体的に会って話をする機会もなかった。人が命まで落とすということをどう受け止めているのか」と述べた。近いうちに労災申請も行う予定だという。
三菱電機広報部は、報道機関向けに「あらためてご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆さまにお悔やみを申し上げます。今後、訴状を確認のうえ、真摯に対応して参ります」とファックスでコメントした。