東京都西部の建設会社で外国人技能実習生として働いていたカンボジア人男性(34)が、うつ病になったのは、職場でのいじめや暴力が原因だったとして、立川労働基準監督署が労災認定していたことが9月12日、分かった。認定は6月7日付。男性が所属する全統一労働組合などが厚労省記者クラブで会見を開き、明らかにした。精神疾患で実習生の労災が認められるのは珍しいという。
組合によると、従業員約20人の会社で、うち5人ほどが実習生だという。すでに男性側に謝罪していることや、未払い残業代などの点で交渉中のため、社名は非公表としている。
男性は日本語の聞き取りはある程度できるが、話す方は難しいレベル。2014年6月に来日し、7月からこの会社で配管工として働き始めた。
入社当初から日本人社員による暴言や暴行があったそうで、労基署も「バカ、この野郎」などの暴言や、ヘルメットの上から小突かれるなどの暴行が継続的に行われていたと認定している。このほか、組合は「カンボジアへ帰れ」と言われたり、ヘルメットの上からハンマーで殴られたりすることもあったとしている。
男性は今年3月、病院でうつ病と診断され、その後、契約が終了。組合に相談していた。
なお、男性は2015年9月、作業中の事故で左手人差し指の第一関節部を切断し、入院している。その際にも、三鷹労基署から労災認定されており、このときのショックも今回の労災認定の要因の1つとなった。
組合などによると、実習生の日本語能力を高める制度が不十分で、意思疎通の困難さや差別意識などから同種のいじめ問題が多発しているという。加えて、日本語が不自由な実習生はどこに相談して良いかも分からない。この男性は、たまたま姉が日本に住んでいたことから、労働組合とつながることができたそうだ。
男性は、「誰に相談していいか分からず、同僚の実習生たちと(期間は)3年だから頑張ろうと支え合っていた」「労働組合につながれてよかった。同じカンボジア人が困っていたら、どこに相談して良いか教えてあげてほしい」などと話していた。すでに実習期間は終わっており、今月中にカンボジアに帰国する予定だ。