厚労省は2017年度から、中堅保育士の月給底上げを検討している。これに対し、労働組合「介護・保育ユニオン」は12月6日、厚労省記者クラブで会見を開き、「制度自体は画期的で評価できる」としつつ、「若手保育士にもっと支援を」と意見を述べた。
一般的に保育士は役職が少なく、昇給幅の小ささが人手不足の一因と言われている。厚労省が検討中の新制度は経験や技能を積んだ保育士を対象に、新しい役職を設けるというもの。一定条件を満たせば、月給4万円が上乗せされる。
これに対し、介護・保育ユニオンは「厳しい労働実態や低賃金から1〜2年目でやめてしまう若手が多い。中堅にいたらないで辞めてしまう可能性がある」と主張。若手の給与増額や労働環境の是正を訴えた。
●目立つサービス残業
ユニオンには、今年6月の結成以来、保育関係者から86件の労働相談があったという(11月30日時点)。このうち8割で労働基準法違反の可能性があり、賃金未払いについての相談は64件(74.4%)、休憩時間の不足が53件(61.6%)を占めた。特に、行事用の制作物を家で仕上げるなどの「サービス残業」についての相談が多かったそうだ。
相談者の年齢も20代が32.6%でもっとも高く、ユニオンは若手保育士の早期離職を懸念している。実際、相談者の中には、保育士1〜2年目で退職してしまった人もいる。
たとえば、企業が運営する認可保育園で働いていた岩手県の女性(21歳)は、月30〜40時間の残業に加え、自宅でも行事の準備を余儀なくされていた。しかし、残業代はほとんど支払われていなかったという。女性は過労やプレッシャーでうつ病を発症し、約1年で退職。この企業には、賃金未払いや法定の休憩時間を取らせなかったことなどを理由に、労基署から是正勧告が出されている。
同ユニオンは、保育業界でのサービス残業のまんえんを念頭に、仮に国が保育士の給与水準をあげられないとしても、「賃金が適切に支払われるだけで、給与水準は一定程度上昇する」と主張。また、保育士の過労は「保育の質」にも影響するとして、労基法を遵守させるよう、行政の取り組み強化が必要だと訴えた。