マンションなどの空き部屋を旅行者に貸し出す「民泊」をめぐって、法律による規制対象が明らかでないとして、都内の弁護士が12月6日、旅館業法にもとづく江東区長の許可を受ける義務がないことを確認する訴訟を東京地裁に起こした。原告側によると、民泊に関するこうした訴訟は全国初という。
●「規制が適用されるべき民泊と、そうでない民泊がある」
原告の石原一樹弁護士は提訴後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。石原弁護士は今年から、東京都江東区にあるワンルームマンション(23平米)を所有している。もともとは民泊にしようと考えていなかったが、訪日観光客の受け入れなどの話題に触れる中で「自分でもやってみたい」と関心をもったという。
ホテル営業や旅館営業など、旅館業については、旅館業法による規制がある。行政は旅館業について「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」などと定義しており、許可を得ずに勝手に営業した場合、刑事罰を受ける可能性がある。民泊については、直接の定義はないが、旅館業法が適用されると考えられている。
一方、石原弁護士は、民泊をはじめるために法律を調べる中で、「規制が適用されるべき民泊と、そうでないものがあるのではないか」と持論をもったという。だが、保健所に相談に行ったところ、「許可が必要だ」といわれたため、「裁判所に判断してもらわざるをえない」として、今回の提訴に踏み切った。
石原弁護士は会見で、「民泊が堂々とやりずらい状況にあるが、『民泊=違法』という構図に違和感を持っている。民泊ならば規制の対象になるのか。旅館業法の観点からはそうとはいえないでないか」と述べた。石原弁護士はまだ民泊をはじめていないが「外国人観光客に日本の良さを知ってもらったり、おもてなしをしたい」と考えている。
●「すべて一律に規制する必要があるのか」
原告側が問題としているのは、民泊をめぐって、旅館業法の文言を超えた解釈による規制が許されるのかという点だ。また仮に、民泊が旅館業と定義されたとしても、「すべて一律に規制する必要があるのか」(原告側)という疑問も残る。
原告代理人をつとめる藤原大輔弁護士は「民泊だけでなく、規制をかける行政に対して、本当に『そういう法律でいいのか』『そういう法律の解釈でいいのか」と、全般的に問うことになる」「規制立法のあり方や、解釈の見直しのきっかけになれば」と今回の訴訟の意義を語っていた。