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あさイチ「毒餌で野良猫駆除した人に同情」発言が物議...どんな法的問題がある?
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あさイチ「毒餌で野良猫駆除した人に同情」発言が物議...どんな法的問題がある?

11月24日に放送されたNHK朝の情報番組「あさイチ」で、猫の糞尿被害に悩まされた視聴者から「毒餌をやった人に同情します」というFAXが寄せられたことが、インターネット上で話題になった。

番組ではこの日、千葉県浦安市における、飼い主がいない「地域猫」を管理する活動について紹介。地域猫の避妊去勢手術などを行う活動員の女性が、飼い猫が脱走した際、仕掛けられた毒入りのエサを食べて死んでしまったエピソードを語った。すると番組に、猫の糞尿被害に悩まされたという視聴者から「毎日糞の始末をし、気が狂いそうでした」「毒餌をやった人に同情します」というFAXが届き、番組内で紹介された。

ネット上では「迷惑でも毒エサ仕掛けるなんて犯罪だ!」といった反応が見られた。野良猫を撃退するために毒餌を仕掛けることは法的にどのような問題があるのか。渋谷寛弁護士に聞いた。

●愛護動物を「みだりに」殺傷すると処罰の対象に

「飼い主がいない猫でも、みだりに殺傷すると、動物愛護管理法の動物殺傷罪に該当し、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられます(同法第44条1項)。ただし処罰の対象となるのは、『みだりに』殺傷した場合だけです。

ここでいう『みだりに』とは、合理的な理由なくという意味です。野良猫が糞尿被害を与えている場合に毒餌で殺処分することは、動物に対する生命尊重という同法の目的(同法1条)、他の方法を取り得ることを考えれば、合理的な理由があるとは言えないでしょう」

渋谷弁護士はこのように指摘する。

「この処罰の保護の対象になるのは、生き物の中でも愛護動物に限られます。愛護動物は、牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひるの11種類の動物と、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものに限られます。

人と結びつきの深い家畜など、猫を含む11種類の動物については、飼い主がいない野生の動物である場合を含めて保護の対象になっています。当然、野良猫であっても愛護動物に含まれることになります。

害虫や飼い主のいないネズミは、愛護動物には含まれませんので、駆除しても違法とはなりません。もっとも、ネズミであっても人が占有している場合には愛護動物となり、保護の対象となります」

飼育されている猫が毒餌を食べて死亡した場合、毒餌を仕掛けた人は、飼い主に対して慰謝料の支払などの責任を負うのだろうか。

「飼育されている猫が室外に出て毒餌を食べることは、通常予測できますから、毒餌を仕掛けた人は、不法行為責任(民法第709条)として慰謝料などの損害賠償を支払う責任を負うことになります」

糞尿被害などに悩まされた場合に、法律に抵触しない対処法として、何が考えられるのだろうか。

「無責任な餌やりに伴う糞尿被害は、深刻な問題に発展します。ところが、この問題を簡単に解決することは難しいと言えそうです。

基本的には、餌やりしている人との話し合いでの解決が望ましいのですが、関係がこじれてしまうと先に進みません。動物愛護センターなどの行政機関に苦情を申し出ても、強制的に餌やりをやめさせるようなことはできない場合が多く、抜本的な解決にならないようです。

京都市や和歌山県には、無責任な猫への餌やりを禁止する条例も存在しますので、地方議員に働きかけて条例を制定してもらうという方法も考えられます。裁判所に、餌やり禁止の仮処分を求めるというやり方もあるでしょう。

無責任な餌やりに関しては、餌やりをしている人に対し数十万円の損害賠償を命じた裁判例があります(平成15年6月11日神戸地方裁判所判決)。また、餌やり自体を禁止した裁判例もあります(平成22年5月13日東京地方裁判所立川支部判決)ので、弁護士などに依頼して裁判を提起することも考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

渋谷 寛
渋谷 寛(しぶや ひろし)弁護士 渋谷総合法律事務所
1997年に渋谷総合法律事務所開設。ペットに関する訴訟事件について多く取り扱う。ペット法学会事務局長も務める。

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