東京・駒込や大塚などにあるインドカレー店の外国人従業員の賃金未払い問題をめぐり、従業員と運営会社の社長が6月27日夜、都内の店舗で話し合いをおこなった。社長が出席する話し合いは、問題が注目されてから初めて。この中で、運営会社と社長個人が6月24日に裁判所から破産開始決定を受けていたことが明らかになった。
運営会社の社長は「私の無知と認識不足から、従業員たちに迷惑をかけて申し訳ない」「少しでも多く従業員に分配できるように努力したい」と、未払い賃金があったことを認めて謝罪した。だが、どのような点に認識不足があったのか、どのくらいの額にのぼるのかについて、説明はなかった。
●従業員たちは労働組合を結成
問題になっているのは、東京・駒込や大塚などで5店舗展開するインドカレー店「シャンティ」。「私達は6月20日で解雇・お店閉鎖を通告されています。賃金も2年払われていません。皆さん助けてください」という張り紙がツイッターで大きな話題となった。
従業員によると、昨年ごろから給料の支払いが滞り、今年1月以降の給料は「1円も支払われていない」という。従業員たちは労働基準監督署に相談しながら、15人分の未払い賃金や残業代の合計約6000万円以上を支払ってもらう交渉をしようとしていた。だが、社長側とまともに連絡が取れない状況がつづいていた。
こうした状況を受けて、従業員たちは6月23日に労働組合を結成した。一方、会社と社長個人は6月24日、東京地裁から破産開始の決定を受けていた。
●納入業者「そういうことをする人じゃないと思っていた」
この日の話し合いには、10人以上の従業員のほか、組合側の代理人、破産申立てをおこなった代理人、破産管財人が出席した。破産管財人の説明などによると、会社と社長個人にはほとんど財産が残っておらず、従業員の未払い賃金の原資となるのは、店舗の保証金くらいしかないという。
従業員たちは6月20日付けで解雇と店舗退去を通告されていたが、現在も自主的に店を開けている。だが、このまま営業をつづけると、店舗の賃貸料がかかってしまうため、会社の財産が目減りしてしまうというジレンマがあるという。そうしたことから、破産管財人からは、店舗に居抜きで入ってもらえる新しい経営者を探すという案も示された。
インドやバングラデシュ出身の従業員たちは社長に対して、「なぜ連絡がとれなかったのか」と怒りの声をあげた。組合の代理人をつとめる弁護士は「従業員たちは社長を信じていた。だから何年も我慢していた。なぜ給料を支払わなかったのか」と問い詰めた。しかし、社長ははっきりとした回答をしなかった。破産申立ての代理人によると、破産に至った経緯については、債権者集会(10月予定)で説明するという。
また、話し合い後に店舗から出たきた社長に対して、債権者(納入業者)たちが声を荒げて詰め寄る一幕もあった。約30年の付き合いがあるという業者の男性は「(社長は)そういうことをする人じゃないと思っていた。電話一本入れるくらいの誠意をみせてほしかった」と話していた。