ジメジメした気候が続いている。室内の温度が上がりやすいマンションでは、湿気と暑さ対策に、ベランダの戸や窓を開ける人もいるだろう。
中には、玄関のドアにストッパーなどをつけて開けっぱなしにする家庭もみられる。風通しはよくなるかもしれないが、ネット上には「ダメといわれた」「建築基準法に違反するのではないか」などの声がみられる。
共同住宅では、ドアを開けたままにしてはならないのだろうか。不動産に詳しい瀬戸仲男弁護士に聞いた。
●ドアは開放したままにしてはならない
ーードアにストッパーをつけたり、ものを挟んだりして開けっぱなしにすることは、法律で禁止されているのでしょうか。
マンション等の共同住宅の玄関ドアは、建築基準法・同施行令により「防火設備」とされています。火災の延焼を防止するという「公共的・公益的」な目的の設備です。
ドアは自動的に閉鎖する構造になっており、材質や厚さについて細かい規定(制限)が定められています。開けたままにしておくことは「延焼防止」の目的に反するので、ストッパーなどを挟んで開放しておくことも、やってはいけない行為ということになります。
ーーマンションの規約でも開けっぱなしにすることは認められないのでしょうか。
規約でも、ドアの開放は禁止されていることがほとんどだと思われます。開放できるようにしたいと考えても、規約の変更は認められません。延焼防止は「公共的・公益的」な目的で、区分所有者らの私的な意思によって左右できるようなものではないからです。
賃貸マンションの管理会社にも、住人から「玄関ドアを開放してもよいか」との問い合わせがあるようですが、正確な仕事をしていれば断るはずです。いい加減な管理会社(ないしその従業員)は、深い考えもなしにOKを出すかもしれませんが、後で大変なことになるおそれがあります。
禁止されているにもかかわらず、開放したままにしておいた結果、延焼が生じ、人損、物損などの事故が起きた場合は、「開放しておいた」という事実が重視され、多大な責任を負担させられることも想定されます。勝手な行動は控えましょう。
●「調整」が狂ってしまうおそれも
ーー開けっぱなしにしておくと、他にどのようなリスクが考えられますか。
マンションなどの玄関ドアは、ただ単に設置されているわけではなく、「調整」が必要な設備です。固くもなく緩くもなく、ちょうどよい状態に調整する必要があります。
住人等の素人が勝手に玄関ドアを開放しておくと、この「調整」が狂ってしまうおそれがあります。風の影響やその他の原因により、蝶番やドアクローザーの調整が狂ってしまうと、素人の手には負えなくなり、専門のドア業者に直してもらわなければなりません。
分譲マンションの場合、玄関ドアは「共用部分」となります。そのため、区分所有者が自分で勝手に修理するわけにいかず、理事会に連絡するなどの手間や時間がかかり、ドアが閉まらないまま数日過ごすなど危険な事態になる可能性があります。
賃貸マンションでも、賃貸人または管理会社に連絡してすぐに修理されるかどうかはわかりませんので、注意が必要です。