下着を盗んだり日常的に家族を口撃したりする義父から逃げたい。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者は義両親と同居していますが、義父はモラハラで家族を苦しめてきました。ある日、相談者と夫が留守の間に、夫婦の寝室に誰かが入った様子があったそうです。そこで隠しカメラを設置したところ「カメラに映っていたのは、私の下着を盗む義父の姿でした」。
「警察に訴えたい」と夫や義母に相談しても宥められてしまい、義父も開き直っています。日常的な嫌がらせも募り、「義父の顔を見るだけで吐き気と動悸が止まらなくなってしまった」そうです。
相談者には娘がおり、娘が被害に遭わないようにするためにも離婚を考えています。どのように対処するべきでしょうか。鈴木淳也弁護士に聞きました。
●義父の行為だけでは「離婚理由としては認められない」
ーー義父の行為によって夫婦関係にも影響が出ています。このような義父のふるまいは、離婚事由として認められますか。
夫が離婚に応じてくれるのであれば離婚できますが、夫が離婚に応じない場合は、法定の離婚事由に該当しない限り、裁判で離婚が認められることはありません。
民法で定められている離婚事由は以下のとおりです(民法770条)。
(1)配偶者に不貞な行為があったとき
(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき
(3)配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
ご覧のとおり、配偶者に問題がある場合に離婚を認めることになっています。
そのため今回のような義父に問題行為があっても、それだけで直ちに離婚が認められることはありません。
●夫が親身に対応しなければ別居を
ーーとはいえ、相談者にとっては結婚生活の大きな障害となっています。どんな対抗策があるのでしょうか
ご相談者様は義父の顔を見るだけで吐き気と動悸が止まらないということですので、もはや一緒に暮らすのは困難な状況かと思われます。
夫がこれを認識したうえで、例えば両親との同居を解消するなど、問題の解決に向けた行動を一切行わないといった事情があれば、夫の態度・行動を問題視し前述の婚姻を継続し難い重大な事由があるとして離婚が認められる可能性は出てくるかと思われます。
夫に相談しても親身に対応してくれず、ご相談者様が離婚を考えているのであれば、直ちに夫と別居なさるのがいいでしょう。別居期間が一定期間をこえると婚姻生活が破綻しているとして、離婚が認められる可能性があります。
ーー義父に対して、民事で法的責任を問うことは可能でしょうか
下着の窃盗に関して、刑法上は親族間の犯罪に関する特例(刑法244条1項)として窃盗罪で処罰はされません。
しかし、違法行為ではありますので、そこまでするかどうかは別として、法的には不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求として民事上の法的責任を問うことができます。
下着の窃盗以外でも、ハラスメントが日常的にあったということですので、その点についても不法行為として損害賠償請求していくことが可能です。
今回は、下着を盗む義父の姿を撮影したものが証拠としてありますし、ハラスメントに関しては、録音や詳細を日記に記しておくなどすれば証拠とすることができます。