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「アルバイトは有給も社会保険もない」ワンマン社長の無慈悲な指示…法的に問題ない?
画像はイメージです(kou / PIXTA)

「アルバイトは有給も社会保険もない」ワンマン社長の無慈悲な指示…法的に問題ない?

東京都内で輸入商品を扱う会社に「週5日、1日8時間労働」のアルバイトとして勤めていたリエコさん(30代)。2023年1月いっぱいで退職しましたが、「有給消化」を認めてもらえなかったと怒りが収まりません。

「30人ほどの社員がいる会社でしたが、基本的には社長のワンマン体制。労務部に有給の相談をしたところ、社長の言葉として『アルバイトに年次有給休暇はない』と返答されました」

働き始めた当初は社会保険加入でも一悶着あったといい、「社会保険完備」の募集だったにもかかわらず、「アルバイトには社会保険ないよ」と言われたそうです。さすがにおかしいと思ったリエコさんは、会社と交渉してなんとか社会保険加入は認めてもらったといいます。

「業務内容自体には不満がなかったのですが、信用ならない会社だなという印象が拭えず、結局1年半で退職することにしました。有給がなかったので、退職する1月31日まで働きました。有給取得について会社とやり取りする気力もなかったです」

この会社から言われたように、アルバイトには有給や社会保険はなくても問題ないのでしょうか。大木怜於奈弁護士に聞きました。

●週1日以上働くアルバイトなら「有給付与しないといけない」

——アルバイトには有給がなくても問題ないのでしょうか。

アルバイトであるからというだけで、年次有給休暇を付与せず、社会保険に加入しなくてもよいものではありません。

まず、年次有給休暇の付与についてですが、いわゆるフルタイムの労働者(週所定労働時間が30時間以上、所定労働日数が週5日以上の労働者、または1年間の所定労働日数が217日以上の労働者)が、雇い入れの日から6カ月経過し、その期間の全労働日の8割以上出勤した場合、所定の日数が付与されます(労働基準法39条2項、労働基準法施行規則24条の3)。

たとえば、入社して6カ月経過したら「10日」の休暇が付与されます。さらにその1年後、入社して1年6カ月経過したら新たに「11日」の休暇が付与されるというように日数が少しずつ増えていき、入社して6年6カ月経過したら付与される休暇が「20日」となり、これ以降は毎年「20日」の付与となります。

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他方、アルバイトなどのパートタイム労働者など所定労働日数が少ない労働者(週所定労働時間が30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下、または1年間の所定労働日数が48日から216日までの労働者)についても年次有給休暇は付与されます。

ただし、フルタイムの労働者よりも付与日数は少なくなります。

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たとえば、週2日でアルバイトしている場合だと、入社して6カ月経過したら「3日」の休暇が付与されます。さらにその1年後、入社して1年6カ月経過したら新たに「4日」の休暇が付与されるというように、フルタイムの労働者の場合と同様に日数が少しずつ増えていき、入社して6年6カ月経過したら付与される休暇が「7日」です。

年次有給休暇は、「正社員かアルバイトか」という雇用形態を問わず、フルタイムの労働者であれば同じように付与されます。

リエコさんのように「週5日、1日8時間労働のアルバイト」として働いていた場合には、雇い入れから6カ月が経過した時点で「10日」付与されなければなりません。

——社会保険についてはどうでしょうか。

社会保険の加入については、1週間の所定労働時間が一般社員の4分の3以上(1週30時間以上)および1カ月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上(1カ月の所定労働日数が15日以上)業務に従事する労働者は、パートタイマー、アルバイトなどの名称を問わず、社会保険の被保険者となります。

また、法改正により短時間労働者を対象とした社会保険の適用拡大が進み、2022年10月以降、従業員数101人以上の企業については、パートやアルバイトといった短時間労働者でも、以下の(1)〜(4)すべてを満たす働き方をする場合は、社会保険の加入対象になります。

(1)週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
(2)月額賃金が8.8万円以上
(3)2カ月を超える雇用の見込みがある
(4)学生ではない

「週5日、1日8時間労働のアルバイト」として働いていたリエコさんの場合は、2022年10月以降の適用拡大以前から、社会保険の被保険者に当たります。

——会社が有給を付与してくれない、社会保険に入れてくれないといった場合、アルバイト(労働者)側はどうすればいいのでしょうか。

年次有給休暇を付与してくれないという場合、まずは公的な窓口である労働基準監督署に相談することをお勧めいたします。

また、社会保険に加入していないという場合、使用者が加入させてくれないということであれば、年金事務所に相談することをお勧めいたします。

労基署や年金事務所に相談しても奏功しない場合、労基署や年金事務所から企業に対して連絡・是正指導などを促す上申を行う、それでもだめなら、弁護士に相談して会社に対して連絡文書を送ってもらう、といった手段が考えられます。

プロフィール

大木 怜於奈
大木 怜於奈(おおき れおな)弁護士 弁護士法人レオユナイテッド銀座法律事務所
弁護士登録前の会社員としての勤務経験も活かし、ビジネス実態に即したリーガルサポートの提供を心掛け、企業法務においては、「管理法務」を取扱業務の柱として、多様な経営者のパートナーとして、人事労務、営業秘密管理、風評管理など、様々なサービスの拡充に努めております。 また、労働問題にも重点的に取り組み、「企業の人事労務クオリティ向上による従業員に対する真の福利厚生の実現」を目指しています。

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