京都大学は2月22日、通勤手当を不正に受給し続けた大学院理学研究科の男性准教授(50代)を停職4カ月の懲戒処分にしたとホームページ上で発表した。
准教授は、2003年12月に奈良県内から京都市内に転居したにもかかわらず、奈良県内から通勤しているように装い、2004年1月から2018年9月まで総額約906万円を不正に受給していたという。大学側は、就業規則に掲げた禁止事項にあたるとして処分をおこなった。
一般論として、通勤手当を不正に受給した場合、どのような法的問題があるのだろうか。
●通勤手当の不正受給「詐欺罪に問われる可能性も」
徳田隆裕弁護士は「通勤手当の不正受給は、懲戒処分の対象になることがある」と語る。企業秩序を乱すおそれがあるためだ。ただし、懲戒解雇については、次のような事情を考慮して、無効になることもあるという。
(1)不正受給の金額の大きさ(会社に与えた損害額)
(2)不正受給していた期間の長さ
(3)不正受給について、労働者がわざとしていたのか、会社に報告するのを忘れていただけか
(4)会社が通勤手当の支給について、厳格に管理・運用していたのか
(5)労働者の過去の懲戒処分歴
(6)反省の態度を示しているか(不正受給した金額の返金を申し出ているか)
「たとえば、(1)不正受給の金額が小さく、(2)不正受給の期間が短く、(3)労働者が通勤について会社に報告するのを忘れていただけであり、(4)会社が通勤手当の支給について、厳格に管理・運用しておらず、(5)労働者に懲戒処分歴がなく、(6)労働者が不正受給について、反省している場合には、通勤手当の不正受給を理由とする懲戒解雇は、懲戒処分として重すぎるとして、無効になる場合があります」
転居後にうっかり会社に伝えるのを忘れていたとしても、会社が転居先の報告を求めていたり、不正受給の金額が大きかったりするなどの事情があれば、懲戒解雇される可能性があるということだ。
さらに、徳田弁護士は、通勤手当の不正受給は「刑法の詐欺罪に問われる可能性もある」と指摘する。わざと不正に受給し続ければ、犯罪にあたりうるため、注意が必要だ。