「副業収入が300万円を超えない場合は事業所得ではなく雑所得」とした国税庁の通達案に反対意見が殺到し、大幅に修正されることになった。
国税庁が10月7日に公表した修正案は「所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存すれば事業所得にできる」という内容だ。300万円という金額で線引きするのではなく、帳簿の有無で区分することになった。
国税庁が8月に募ったパブリックコメントには1カ月間で7059件もの意見が寄せられ、通達案に反対するパブコメを受けて国税庁が修正した形だ。
● 金額で線引きせずに帳簿の有無で区分
国税庁が8月に出した元の通達案は「会社員の副業収入が300万円を超えない場合は事業所得ではなく雑所得にする」というものだった。
国税庁が通達案を出したのは雑所得か事業所得なのか基準を明確にするためだ。会社員の副業をめぐっては、副業収入を事業所得にして副業を赤字計上し、本業の給与所得と損益通算して節税する人がいて国税庁は頭を痛めていた。事業所得は損益通算できるが、雑所得に区分されれば他の所得と損益通算できなくなる。
雑所得は、確定申告で最大65万円の特別控除を受けることができる「青色申告」が使えないなど節税効果が小さい。このため通達案が出た直後からインターネット上では「コロナ禍で収入が減り、副業を頑張っているのに節税もできないのか」などの反対意見が上がっていた。
国税庁が7日公表したパブコメには「300万円の基準が不明確」「会社を辞めずに起業した人は収入が300万円を超えない場合が多いが、これも雑所得なのか」「収入金額300万円は大きすぎる」「副業を推進する政府の方針に逆行する」などの意見が載っている。
パブコメを受け、国税庁が出した修正案では本業か副業かは問わず、所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存すれば、事業所得と認められることになった。300万円の基準は実質的にはなくなった形だ。
新しいルールは2022年の所得分の確定申告から適用される見通し。