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「契約社員は育休をとれない」はウソーー非正規社員「産休・育休」の取り方
画像はイメージです(Rina / PIXTA)

「契約社員は育休をとれない」はウソーー非正規社員「産休・育休」の取り方

妊娠や出産を理由に解雇や嫌がらせをうける「マタハラ」。社会問題化しても、被害を訴える声はあとを絶ちません。妊娠7カ月で有期雇用契約を停止された女性から「正社員の女性たちは、ごく普通に産休育休を取得しているのに、不公平じゃないですか?」と、相談が寄せられました。南川 麻由子弁護士に聞きました。

 

Q. 「妊娠7カ月」で雇用契約を終了にした会社に問題はない?

契約社員(契約期間1年)として販売の仕事をしています。入社して5年目、半年前に4回目の契約更新をしたばかりです。

契約更新した直後に妊娠が判明し、すぐに会社の上司に妊娠を報告し、「産前6週まで働きます」と伝えました。

ところが先日、会社から「契約社員の方は育休はとれませんし、新しい方の採用が決まりました。来月末で辞めてください」と一方的に通告されたんです。

来月末には妊娠7カ月です。それから約2カ月間だけ働く場所をみつけるなんて、無理です。

契約社員などの有期雇用契約では育休はとれないんでしょうか? 勤務先の正社員の女性たちは、ごく普通に産休育休を取得していて、この不公平さが悔しいです。

A. 「産休・育休は全ての女性労働者に認められた権利」

よく「産休・育休は正社員だけしかとれない」と誤解している方がいらっしゃいますが、これは間違いです。

まず、「産休(産前産後休暇)」は、労働基準法で「産前6週間(多胎妊娠は14週間)から産後8週間」まで休暇をとる権利が、雇用形態を問わず、全ての女性労働者に対して認められています。

正社員にかぎらず、契約社員やパートなどのいわゆる非正規雇用の方(有期雇用契約で働く人)も、雇用契約期間内であれば産休を取得できるのです。

次に、「育休(育児休業)」については、「申し出れば子どもが1歳になるまでの間、育児休業をとることができる」と、「育児・介護休業法」に定められています。

平成17(2005)年の改正で、非正規雇用の方でも、一定の条件を満たす場合は育児休業を取得できることになりました。具体的には、育児休業を申し出る時点で、下記の3つの条件を満たす必要があります。

A)今の職場で1年以上働いている

B)子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用が見込まれる

C)子どもの2歳の誕生日の前々日までに雇用契約が切れ、契約更新もされないことが明らかになっている場合ではないこと

このA、B、Cを全部満たす場合は、非正規雇用の方であっても育休を取得する権利があります。

さらに厚労省は、形式的には一見B、Cにぴったり当てはまらなそうに見える場合でも、「実質的には無期雇用契約と異ならない状態」にあれば、育児休業の対象となる、としています。

事案によりけりですが、例えば4年以上契約社員として働いていて、「直近の更新の際に今後も引き続き継続雇用するような話がでた」、「他の契約社員は希望すればほとんど継続雇用されている」というような事情がある場合なら、育児休業取得の対象となる可能性があります。

また、男女雇用機会均等法は、妊娠出産を理由に解雇や減給、降格など労働者に不利益となる取り扱いをすることを禁止しています。

妊娠により労働能率が落ちて今までどおり働けなくなるからといって、契約社員の雇用期間がまだ残っているのに途中で雇止したり退職勧奨することは、違法です。

なお、会社によっては、法律よりもさらに手厚い産休・育休制度を採用している場合もあります(産休を産前6週間よりも前からとることができる、子どもが2歳、3歳になるまで育休がとれるとしている等)。

まずは、ご自身の勤務先の産休・育休制度を確認してみましょう。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

南川 麻由子
南川 麻由子(なんかわ まゆこ)弁護士 あおぞらの虹法律事務所
インターネット・SNS関連や、離婚、相続、遺言、成年後見等を得意分野とし、民事・家事・刑事等幅広い分野に対応。ハラスメント等の研修、子どもや市民向け法律講座やLGBT支援などにも取り組む。Twitterアカウントは@lawyerMAYUZO。

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