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「2万円のおせち」「ブランド洋服」社員の強制買取、買わなきゃだめ?
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

「2万円のおせち」「ブランド洋服」社員の強制買取、買わなきゃだめ?

勤務先で、商品を強制的に買取させられそうーー。そんな人たちから、弁護士ドットコムの法律相談には、様々な相談が寄せられています。

ある方は、「毎年、年末になると、ほぼ強制的に約2万円の『おせち』を会社から購入しなければなりません」と書きます。強制ではないものの「周りの方がみんな購入しているので、断りづらい雰囲気がすごく感じられます」といい、購入しないことで「不当な扱いをされたら…。なんて考えると買わざるを得ません」。

また、ある紳士ブランドショップで働く方は、「強制的に高額のそのブランドを買って着ろと言われました。職務規定にもそういう事は全く記載されていません」と言います。

このような、断りづらい雰囲気の中で、自社製品の強制的な買取を拒否することはできるのでしょうか?また、商品を明確に「買え」という場合だけでなく、暗黙の了解事項として買取をさせることは、どのような法的な問題があるのでしょうか?村松由紀子弁護士の解説をお届けします。

●自社製品購入の義務はある?

会社が従業員に対し、何かを強制するには、法的な根拠が必要です。従業員が、自社製品を購入する義務はどこにもありません。従って、会社は「明示的」であれ、「黙示的」であれ、商品買取を強制することは出来ず、仮に強制された場合は拒否することができます。

買取義務がない以上、従業員が買取を拒否したことを理由に、不当な扱いをすることも許されません。

●購入を強制することの法的な問題は?

仮に会社が買取を強制した結果、商品を購入した場合は、会社の行為を「不法行為」として、民事上の損害賠償請求をすることができる場合があります。刑事上は「強要罪」が問題となりえますが、会社が実際に刑事責任を問われる可能性は少ないでしょう。

裁判例としては、会社側が、商品を理解するために商品を買えと従業員に迫り、従業員が一度は拒否したものの、最後はやむなく会社商品を購入したという事件(「美研事件」)があります。

裁判所は、会社側が立場を利用し従業員に不要な商品を購入させることは、「公序良俗に反し不法行為を構成する」と判断し、購入させられた商品代金について、損害賠償請求を認めました。

実際には、同僚がみな商品を購入しているという場合などでは、拒否しづらいケースもあると思います。しかし、その場合にも「拒否できる」という選択肢があることを意識して欲しいと思います。会社側には、強制が違法行為との認識がない可能性もありますので、職場有志で法律上の根拠をもとに、強制をやめるよう、かけあってみるなどの対応もできるのではないでしょうか。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

村松 由紀子
村松 由紀子(むらまつ ゆきこ)弁護士 弁護士法人クローバー
弁護士法人クローバーの代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍する他、社会保険労務士4名、行政書士1名が所属。企業法務を得意とする。その他、交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題を幅広く扱う。

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