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2016年06月28日 00時00分

「内定辞退」は法的に問題ないの? トラブルを避けるための基礎知識

「内定辞退」は法的に問題ないの? トラブルを避けるための基礎知識
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

就職・転職活動でもらった「内定」。でも、他の会社からも内定をもらうなどして、せっかくのご縁であってもお断りせざるを得ないこともあります。「内定」は、簡単に断っても問題ないのでしょうか。「内定を辞退したら法的な問題になるのでしょうか?」と、弁護士ドットコムの法律相談にも、質問が寄せられています。

ある社会人の方は、転職活動で内定が出たので、その企業へ「入社承諾書」を提出しました。しかし「諸事情により、入社予定の15日前に内定辞退を申し出ましたが、入社辞退は受け入れがたいと言われました」と困惑しています。

別の転職活動中の方も「辞退を連絡したところ『訴えてやる、他の会社に行けなくなるようにする』と言われてしまいました…」。

また、ある学生さんは、入社予定日の2週間前になって、内定辞退を考えています。その場合、「支給予定だった備品(PCや名刺)、研修における交通費、懇談会の飲食費、採用にかかわる人件費」を請求されるのではないかと質問しました。

そもそも「内定」は、法律ではどのように定められているのでしょうか。また内定を辞退することで、損害賠償を請求されることは本当にあるのでしょうか? 友弘克幸弁護士の解説をお届けします。

●「内定」で「労働契約」が成立する時期は?

まず「内定」の法的な位置づけについて解説します。「内定」の具体的な手続は、会社によって多少異なるかもしれませんが、一般的には新卒学生の就職であれば活動を念頭に置くなら、会社が「採用内定通知書」を出し、それに対して求職者が「誓約書」などの書面を提出するというパターンが典型だろうと思います。

そのような典型的なケースを前提とすると、会社が「採用内定通知書」を出した時点で、求職者と会社との間では「労働契約」が成立すると考えるのが一般的です。

●「内定辞退」のルールとは

では、「内定辞退」はどのように進めていけばよいのでしょうか。

1)「2週間前までに」申し出るのが原則

「内定」によって労働契約が成立しているという前提からすれば、「採用内定通知書」により労働契約が成立した、と判断される一般的なケースでは、「内定辞退」とは、労働者側から、すでに成立した契約関係を「解約」することを意味します。

そして、労働契約の解約については、民法627条1項で「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合、契約は申入れの日から2週間を経過することによって終了する」と定められています。

つまり、実際に働き始める予定の日の、遅くとも2週間前までには、内定辞退する旨を会社に通知しなければなりません。

2)辞退の「理由」は何でも大丈夫

期間の定めのない労働契約(通常、「正社員」とされる労働者の雇用契約は、期間の定めのない雇用契約です)については、労働者側から解約するには、「理由」は必要ありません。「別の会社に決めた」でも、「自分で起業することに決めた」でも「就職せず進学・留学することにした」でも、どのような理由であっても、内定辞退することは可能です。

3)会社側との交渉での注意点

仮に、会社側が「内定辞退は受け入れがたい」と言ったとしても、内定辞退を申し入れてから2週間経てば、その会社との契約関係は終了します。したがって、法的に言えば、出勤しなければ良いだけのことです。

ただし、注意しなければならないのは、内定辞退の際の「方法」や「言葉遣い」です。会社側が内定辞退に難色を示しているのであれば、あとで「言った、言わない」ということにならないよう、文書など、きちんと形が残る方法で内定辞退を申し入れるべきです(場合によっては、「配達証明付き内容証明郵便」を利用する)。

また、言葉遣いについても、「内定を辞退させていただけませんか?」という表現(お願い)ではなく、「(会社の意向にかかわらず)内定を辞退します」と、内定を辞退する意思がはっきりと伝わるような表現を用いるべきでしょう。

いずれにせよ、会社の態度に不安を感じたら、早めに弁護士など専門家に相談されることをお勧めします。

●「損害賠償請求」の可能性は?

まず、2週間の予告期間を置かずに内定辞退をした場合には、法律上のルールを守らなかったわけですから、損害賠償請求される可能性があります。いっぽう、2週間の予告期間をきちんと守って内定辞退をしたのであれば、通常、損害賠償責任を負わされることはありません。

ただし、いくら「内定辞退することは労働者の権利」とはいっても、「権利の行使は信義に従い誠実に行わなければならない」(民法1条2項)とされています。

たとえば、かなり早い段階で、客観的にみて内定辞退せざるをえない状況が生じており、しかも会社にそのことを伝える機会があったにもかかわらず、あえて入社予定日の2週間前ぎりぎりになって会社に伝えたなど、内定辞退の方法が「著しく信義に反する」と判断されるケースでは、会社から損害賠償請求される可能性も否定はできません。

この点、やや特殊なケースに関する判断ではありますが、「内定辞退の申入れが、著しく信義則上の義務に違反する態様で行われた場合には、(労働者は、)債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償責任を負う」と述べた裁判例もあります(東京地裁平成24年12月28日。ただし結論としては労働者の損害賠償責任を否定。)。

したがって、いったん内定辞退をすると決めたのなら、できるだけ速やかに会社に伝えるべきでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

取材協力弁護士

友弘 克幸弁護士
京都大学法学部卒業。2004年に弁護士登録。日本労働弁護団、大阪労働者弁護団に所属。
残業代請求、解雇、労災など、労働者側に立って労働事件を多く手がける。著書に「よくわかる 未払い残業代請求のキホン」(2018年、労働調査会)。

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