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「劇団員も労働者」 劇団の運営会社に「未払い賃金」の支払い命じる…東京高裁
記者会見を開いた原告の男性(真ん中)ら(2020年9月4日/弁護士ドットコム撮影)

「劇団員も労働者」 劇団の運営会社に「未払い賃金」の支払い命じる…東京高裁

劇団員が労働者であるか否か(労働者性)が争われた訴訟で、画期的な判決があった。

元劇団員の男性が、劇団の運営会社「エアースタジオ」に未払い賃金の支払いをもとめた訴訟の控訴審で、東京高裁は9月3日、男性が公演に出演したことなどについても労働者性をみとめて、会社に対して約186万円の支払いを命じる判決を下した。

●出演・稽古についても労働者性がみとめられた

判決などによると、原告の末廣大知さん(34歳)は2009年8月、社員ではなく、入団契約を結んで、2016年5月に退団するまで劇団員として活動した。この間、公演への出演や稽古のほか、いわゆる裏方業務(大道具・小道具・音響・照明など)に従事しながら、会社が運営するカフェ・バーでもアルバイトとして働いた。

しかし、劇団での業務が長時間であったにもかかわらず、月6万円(カフェ・バーのバイト代・出演料は別)しか支払われなかったことから、末廣さんは退団後の2017年4月、未払い賃金の支払いを求めて、東京地裁に労働審判を申し立てた。会社側が異議を唱えたことから、訴訟に移行していた。

裁判では、男性が、労働基準法上の労働者であるか否か、つまり、会社の指揮命令の下で労務を遂行して、その労務の提供に対して賃金が支払われていたかどうかが争われた。

会社側は、劇団活動は自主的かつ任意でおこなわれるもので、男性は指揮監督下になかったなどと反論していた。

1審の東京地裁は2019年9月、裏方業務(大道具・小道具・音響・照明)については労働者性をみとめて、会社側に対して約52万円の支払いを命じた。2審・東京高裁はさらに、出演・稽古も、会社の指揮命令に服する業務だったとして、労働者性をみとめ、1審判決を変更した。

●「客観的に指揮命令関係がみとめられれば、保護を受けられる」

末廣さんとその代理人は、判決翌日の9月4日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。末廣さんは次のように振り返った。

「(当時)日中は、稽古であったり、小道具の調達であったり、大道具の準備で動いていたり、夜間はセットの建て込みや解体作業や、エアースタジオが運営する飲食店、カフェ・バーの業務が連日つづいていたので、平均すると、1日2、3時間寝ているかどうかがつづいていました。それほどしか寝る時間を確保できませんでした。明け方、飲食店の勤務が終わると、そのまま家に帰る時間がもったいないので、床で寝たりしていました。

それだけ長時間働いていたのにもかかわらず、月6万円と固定されていました。演劇や芸術を志している人たちは、最初は稼げないのが普通だろうと思われているかもしれない。そういうのもあったので、6万円でももらえるなら、それでいいかと納得していました。そういうおかしな働き方にもかかわらず、おかしくないと思わされていました。しかし、(劇団を)やめて、労働基準法のことを知っていくうちに、あの環境はおかしいということに気づきました」

末廣さんの代理人・村山直弁護士は、控訴審判決の意義について、「働き方改革をはじめて労働者に対する保護は手厚くなっているが、労働基準法の労働者でないと、その保護をまったく受けられない。その点を悪用する使用者はあとをたっていない。脱法的な労働者に対する権利侵害を予防していくためにも、使用者みずからが労働者性がない判断しても、客観的に指揮命令関係がみとめられれば、保護を受けられるということを社会全体で共有してほしい」と語った。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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