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もはや職場の主、「お局さま」のヒドすぎる後輩いびり 退職者続出、パワハラでは?
画像はイメージです(【IWJ】Image Works Japan / PIXTA)

もはや職場の主、「お局さま」のヒドすぎる後輩いびり 退職者続出、パワハラでは?

「そんなこともできないの?!」。職場の「お局」からのキツい物言いに疲弊している人も少なくない。中には、嫌がらせに耐えきれず、退職する人も。

東京都内の広告関連会社で事務職のアルバイトをしていたカオリさん(20代・女性)もその1人。採用面接ではバイトが他に2人いると聞いていたが、入社と同時になぜか全員退職していた。

その理由が「お局」だと気づくのに時間はかからなかったという。「あなたを見ているとイライラする」「この職場は仕事できない女ばかりでムカつく」などと毎日言われ続けたそうだ。

ある日、ふだんは午前中にくるはずの郵便物が午後に届き、お局の機嫌は最悪に。「郵便の配達が遅れたのはあなたのせいよ、どうしてくれるの」と郵便物やコピー用紙を投げつけられた。

この事件をきっかけに、カオリさんは退職した。お局の態度については、これまで上司にも複数回相談していたが、「(お局は)長く勤務してくれているので、辞めさせることはできない」と言われたという。

●ネットに溢れる愚痴 プライベートにまで口出し

ネット上には「私に聞こえるように『あの子きらーい』と言われた」「何も言われないかわりに、ずっと無視される」などの声がみられる。

中には、プライベートに口出しをしてくるお局も。「あなたはそんなだから旦那が女作って逃げていくのよ」と言われたバツイチの女性や「早く結婚して子ども生んで仕事辞められるといいわね」と言われた独身女性などの声もあった。

お局は正社員の場合もあれば、パートなど「非正規」のこともある。いずれにしても勤続年数が長く、「自分の方が仕事を知っている」と考えていることが多い。

お局の法的責任を追求することはできるのだろうか。金井英人弁護士に聞いた。

●パワハラにはならないの?

ーーお局の行為は「パワハラ」と言えませんか?

まず、誰のどのような行為が「パワハラ」にあたる可能性があるのかについてですが、厚生労働省が公表する定義などでは、

(1)優越的な関係を背景として行われること
(2)業務の適正な範囲を超えて行われること
(3)身体的もしくは精神的な苦痛を与えること又は労働者の就業環境が害すること

という3つ全ての要素を満たすものがパワーハラスメントであるとされています。

そして、これらを満たす職場の「パワハラ」にあたりうる行為として、「6つの行為類型」というものが公表されています(『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告』)。

その6類型とは、「身体的な攻撃」、「精神的な攻撃」、「人間関係からの切り離し」、「過大な要求」、「過小な要求」、「個の侵害」の6つです。

このうちのいずれかに該当し、かつ、(1)~(3)の要素のいずれかを欠くものでない場合に、その行為はパワーハラスメントにあたるとされています。

――お局の暴言は該当するんでしょうか?

「死ね」「消えてほしい」などという言動は、当然業務上の必要があってなされるような発言ではありませんし、精神的な苦痛を与えるために発言していることは明らかですから、こうした言動は6類型のうち「精神的な攻撃」にあたる可能性が高いです。

また、業務とは関係のないプライベートなことに口出しするのも、同じく「個の侵害」にあたる可能性があり、どちらも「パワハラ」にあたる可能性があります。  

●正社員、非正規かは関係ない

ーー正社員じゃなかったとしても、パワハラになる?

先ほどの(1)の要素とも関連しますが、上司・先輩など職務上の地位が上の人や、職務上の地位が上でなくとも業務に必要な知識や経験をもっていて、その人の協力がなければ仕事が円滑に行えない立場にある人などが行う行為は、行為を受ける人からすれば逆らえない関係にあるわけですから「優越的な地位に基づいて行われる」といえます。

ですから、相手が正社員であるか、非正規の職員であるかに関わりなく、職場において立場が上であり逆らえない関係にあれば、その人の行為は「パワハラ」にあたる可能性があります。

ーーどのように対処したら良いでしょうか?

近年の法改正により、2020年6月から、事業主には職場でのパワーハラスメントの防止のための措置を講ずる義務が課せられることになりました(中小事業主は2022年4月1日から義務化、それまでは努力義務)。

具体的には、パワハラの相談窓口を定めて周知し、パワハラが発生した場合には迅速に適正な措置をとる体制を整備して、相談者に不利益にならないようにする義務などが事業主に課せられます。

パワハラを受けたと感じた場合には、深刻化する前に、会社内の窓口に相談したり、弁護士などの専門家に相談したりするとよいでしょう。

特に、パワハラがあったか否かが問題になるようなケースでは、証拠の有無が決め手になります。どのような証拠集めをするべきかなど、ケースごとのアドバイスを専門家から早めに受けておくことも大切です。

プロフィール

金井 英人
金井 英人(かない ひでひと)弁護士 弁護士法人名古屋法律事務所 みどり事務所
愛知県弁護士会所属。労働事件、家事事件、刑事事件など幅広く事件を扱う。現在はブラックバイト対策弁護団あいちに所属し、ワークルール教育や若者を中心とした労働・貧困問題に取り組んでいる。

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