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2020年08月09日 07時31分

元テレ東の鷲見玲奈アナ、「上司との週7、8回の飲み会」で肝臓壊す パワハラやアルハラになる?

元テレ東の鷲見玲奈アナ、「上司との週7、8回の飲み会」で肝臓壊す パワハラやアルハラになる?
鷲見玲奈さんのインスタグラムから(https://www.instagram.com/sumi__reina/)

元テレビ東京のフリーアナ・鷲見玲奈さん(30)が、「踊る!さんま御殿!!」(日本テレビ、8月4日放送)に出演し、社員時代にお酒で体を壊してしまったエピソードを明かしました。

入社したばかりの新人のころ、上司から飲みの誘いを受けることがよくあったそうです。連れていかれるのは、スポンサー企業との飲み会や、スポーツ担当のディレクターがセッティングした野球選手との飲み会など。

「上司からの誘いは断ってはいけないものだと思って、全部行っていたんです。週に7、8回くらいで飲みに行って、最長2週間くらい連続で、そしたら肝臓を壊してしまって」

誘いを断れない部下を飲み会に連れ回したり、その結果として部下が体を壊した場合、パワハラやアルコールハラスメントとも言えるのでしょうか。このようなケースの問題点について、平山諒弁護士に聞きました。

●アルハラも場合によっては賠償の対象になる

セクハラやパワハラという言葉は日本社会に定着しましたが、お酒の席でのハラスメント、アルハラという言葉もよく耳にするようになりました。

アルハラに法律的な定義はありませんが、体質的に飲めない人に飲酒を強要する場面や、「俺の酒が飲めないのか!」と無理に飲ませるとか、あるいは酩酊状態になった際の迷惑行為も含めてアルハラと呼ぶことがあります。

ーーアルハラで法律的責任が生じるのでしょうか?

パワハラもセクハラも、飲酒を強要するアルハラも、相手に肉体的・精神的苦痛を与えるという意味では同じ類のものです。

といいますのは、被害者に対する人格権(性的な自由や名誉)、そして身体や生命への侵害を理由とする加害行為として法的な責任が生じる(民法709条)という意味では、これらは民法上の不法行為の一種と言えるからです。

たとえば一気飲みを強要したりして急性アルコール中毒にでもなるなどすれば、慰謝料、治療費、また後遺症が残って従来通り働けなくなれば逸失利益といった内容の賠償問題に発展するでしょう。

さらに、この損害賠償責任を負うのは加害者(上司など)だけではありません。彼らを雇用する会社(事業主)としても、職場内でのハラスメントが防止されるような適切な措置を取っていなかった場合には使用者責任(民法715条)や職場環境配慮義務違反としての債務不履行責任(民法415条)として、賠償責任が認められるケースもあるでしょう。

ーー今回の鷲見さんのようなケースは?

鷲見さんのケースについて直接見解を述べることはできませんので、あくまでも一般論としての話になりますが、入社したばかりの新人などの部下を、上司が飲みに誘うのは、それ自体は人間関係を構築するための行為であるとも言えますし、飲みに誘う行為自体が社会的に逸脱しているとは言えないでしょうから、これだけで特段問題視されるとは思えません。

また、スポンサー企業への接待や、業務に関連するスポーツ選手との懇親会などは、人脈形成や企業としてのコネクションを維持するためという側面もあり、社会人として必要な行動ともいえるでしょう。

ですが、だからと言って無理に誘い、本人が明確に拒否していたり、明らかに嫌がっているのに「飲みニケーションは大事だから」と強引に連れ回したりすれば、これはハラスメントになります。要は、何事も程度問題であると言えます。

たとえ表立って拒否までしていないとしても、週に7〜8回で、2週間も連続して毎日…ということになると、やはり度が過ぎているのではないかという印象を受けます。このあたりは、「週何回なら良い」というガイドラインがあるわけではないので何とも言いにくい部分があります。

●従業員を飲酒強要から守る必要がある

一部想像の域を出ませんが、おそらく今回の件で言えば、アナウンサーという華やかな世界の方がスポンサーの大きな企業の方、スポーツ選手の方たちとの飲み会に出るということですから、「たまには仕事帰りにちょっと軽く一杯だけ」という感じではないと思います。

一回当たりの宴席での飲酒量や拘束時間も相当長時間だったのではないかと想像できます。そうすると疲労が蓄積され、またアルコールの摂りすぎで健康を害するような事態が生じるというのも、容易に想像できてしまいますね。

もちろん自ら積極的に飲み会に来て、自分から進んで飲みすぎてしまうというような自業自得な場合は別ですが、「上司からの誘いだから断りにくい」あるいは「上司の誘いは断ってはいけないものなのだと思っている」という状況に乗じて、すなわち被害者の無知や無理解、職務上の地位の優位性等を背景にして過度な飲酒を強要したとなると、本人の自己責任というよりは、やはり飲ませた側、会社側の責任が追及されてしまう可能性は出て来ます。

そのため、くれぐれも新人さんが飲みすぎて体を壊さないか、断り切れないのをよいことに望まぬ飲酒を強要してしまっていないか、上司としては気を付ける必要がありそうです。

●上司に望まれる役割とは

ーー程度は大事ですが、酒席は職場や、取引先との関係を構築するのに有益でもあるという意見もあります

ですので、上司が部下を飲み会に誘うとか、接待のためについてきてもらうというのがすべて違法で許されないというわけではありません。

職場に馴染み切れていない部下をやや強引にでも飲みに連れて行って打ち解けやすくさせたり、酒を入れた席で悩みを聞いてやってストレス発散させたりするのも、上司に期待されている役割の一つともいえるでしょう。

ですが、くれぐれも、本人が嫌がっているのに無理強いしてしまわないこと、体調を崩すほど頻繁にならないよう、ほどほどに、というのが大事でしょう。

なお、今の時世特有のものですが、最近はコロナで「密」になりやすいからと宴会や懇親会を控える傾向があります。

接待の場などでの感染率が本当に高いのか等は専門家でないのでわからない部分もありますが、労働者が自己防衛のために不要不急な宴席は控えたいと思うのはごく自然な反応です。

このご時世で「若いからコロナになっても大丈夫、飲みニケーションは社会人の義務だ」というようなノリで無理に飲み会を強行したり、酒席に連れまわしたりすれば、もうそれだけでパワハラだと指摘されるリスクも高いでしょう。

取材協力弁護士

平山 諒弁護士
中央大学法学部、一橋大学法科大学院卒。労働事件中心に地域の事業者の企業問題に注力。府中ピース・ベル法律事務所代表。
事務所URL:http://fpb.tokyo/

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