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2020年06月28日 10時14分

職場で「マスク着用義務」なのに自費負担! 会社側が払うべきじゃない?

職場で「マスク着用義務」なのに自費負担! 会社側が払うべきじゃない?
画像はイメージです(kouta / PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大による政府の緊急事態宣言の解除後、仕事が再開し始めています。感染拡大防止のため、仕事中のマスク着用を義務付けられた人も多いと思いますが、その費用をめぐり疑問の声も上がっています。

弁護士ドットコムには美容師の女性が「マスクは会社が用意して、費用を負担するべきではないか」と質問を寄せています。会社からは、お客様用のマスクは用意するが、社員と業務委託のスタイリストは自己負担で準備するように言われたそうです。

また地方公務員の男性も、窓口対応をするため、人事からマスク着用を義務付けられています。しかし、マスクは支給されず各職員が自費で用意。男性は「安全衛生の管理義務を負う役所側で用意し、支給すべき」と訴えています。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため「新しい生活様式」としてマスクの着用がすすめられています。果たして、業務中につけるマスク代は請求できるのでしょうか。大木怜於奈弁護士に聞きました。

●マスク着用命令「業務命令として適法」

ーーそもそも、会社がマスク着用を義務付けることは業務命令として許されますか

労働者は、労働契約上、使用者の指揮命令を受けながら労務を提供する義務を負っています。労働者の労働義務の遂行にあたって、使用者が指揮命令を行う権限のことを指揮命令権といいます。

ーー会社は業務遂行のために、労働者に対して指示や命令をできるということですね

はい。そして、使用者は、労働者の労務遂行上の指揮命令だけではなく、健康診断の受診命令や自宅待機命令など、広く企業の業務全体について労働者に指示・命令を行う業務命令権をもちます。

とはいえ、業務命令権の行使が権利の濫用(民法第1条第3項、労働契約法第3条第5項)にあたるような場合には、その業務命令は違法無効とされます。

たとえば、見せしめをかねておこなわれた就業規則の書き写し命令などは、従業員の人格権を侵害する違法なものと判断されたことがあります。

ーー業務命令であっても、肉体的・精神的に苦痛をあたえるようなものは違法ということですね

はい。また、会社には、安全配慮義務というのがあります。

労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」として、会社の安全配慮義務を定めています。

そのため、使用者は、安全配慮義務の一環として、新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにしかるべき措置を講じる義務を負います。

そうすると、労働者に対して安全配慮義務を負う会社が、労働者の生命、身体の安全や健康を確保するために、マスクの着用を徹底させることも、新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにしかるべき措置といえますので、合理的な内容の業務命令として適法と考えられます。

●費用負担はどうなる?

ーーでは、マスク代の費用負担はどう考えられますか

労働契約における費用負担は、労働契約の内容によって決まります。なお、ここでいう労働契約というのは、労働契約書における合意内容だけでなく、就業規則の定めも含まれます。

そうすると、業務上必要なものであっても、労働契約の内容として、労働者の負担とするという定めになっていれば、労働者に費用負担させることができます。

画像タイトル

労働契約の締結に際し、書面などの法令に定める方法によって明示されることが要請されています(労働基準法第15条第1項、同法施行規則第5条第1項第6号)。また、費用負担関係について就業規則に定めをする場合には、費用負担関係に関する事項を記載しなければならないとされています(労働基準法第89条第5号)。

ーーとはいえ、マスクの購入代金について定めている会社はほとんどないと思います

通常の場合、労働契約の締結時に会社と従業員のどちらがマスクの購入費用を負担すべきか明示することはありませんし、就業規則に会社と従業員のどちらがマスクの購入費用を負担すべきかを記載することもありません。

そのため、労働者に対してマスクの購入費用を負担させる根拠はないと考えられます。そうすると、使用者である会社が費用負担すべきと判断される可能性が高いかと思います。

取材協力弁護士

大木 怜於奈弁護士
弁護士登録前の会社員としての勤務経験を活かし、ビジネス実態に即したリーガルサポートの提供を心掛け、企業法務においては、多様な経営者のパートナーとして、様々なサービスの拡充に努めております。
注力分野としては、労働問題に重点的に取り組み、「企業の人事労務クオリティ向上による従業員に対する真の福利厚生の実現」を目指しています。

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