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マスク不足なのに「つけろ」と指示された! 現場から「職場で用意して」の声
マスクなど関連商品はどこも売り切れている(2020年2月19日、東京都、編集部撮影)

マスク不足なのに「つけろ」と指示された! 現場から「職場で用意して」の声

新型コロナウイルスの感染拡大で、みなさんの生活にはどんな影響が出ていますか。弁護士ドットコムニュースのLINE登録者約1万人に尋ねたところ、もっとも多く寄せられたのが「マスクが足りなくて困っている」と言う声でした。

●職場でマスク着用呼びかけ→手に入らない!

福岡県でコンビニを経営する男性は、コンビニ本部から従業員のマスク着用を呼びかけられたといいます。しかし、マスクは品薄で手に入らず、販売用として少しだけ納品されるものも一瞬で売り切れ。「従業員が買うのも忍びないため、どうして良いのかわかりません」と嘆いています。

ある公共施設で働く男性は、委託元からスタッフのマスク着用や利用客用の消毒用アルコール設置を依頼されました。

あくまで強制ではないと前置きはされたものの、男性は「立場が対等でない上に、委託元が用意もできないため、スタッフ個人がマスク購入することになります。これは依頼と見せかけた強制で、結果的に末端へのしわ寄せが起きています」と訴えます。

●マスク必須の現場に影響も

マスク不足は医療機関でも同じ状況のようです。大阪府の病院で看護師をしている20代女性は、病棟で使用するサージカルマスクの交換ができなくなりました。

新型コロナが流行する以前から、患者から看護師へ、また看護師から患者への感染を防ぐために、仕事中マスクの着用は必須でした。マスク不足となり、師長からマスクの中にガーゼを入れ、ガーゼだけを交換して使いまわすようアナウンスがあったそうです。

職場では「同じマスクでは感染のリスクがあるのでは」、「備蓄のマスクがなくなったら、各自で持ってこないといけないのか」など不満や疑問が出ていると言います。

また、金属加工の仕事をしている男性は、マスクが買い占められた結果、仕事で使う防塵マスクが10倍の値段で販売されています。「1日1枚使うのに1800円もかかったら、生活に支障が出ます」と訴えますが、「会社が用意するのは、中小企業なので厳しい」といいます。

●費用負担は使用者

このように職場で使用するマスクをめぐって、様々なトラブルが起きているようです。仕事で使う場合でも、個人でマスクを用意しなければならないのでしょうか。

労働問題にくわしい笠置裕亮弁護士は「使用者が労働者に対して業務命令としてマスクを着用しなさいと言う場合、その費用負担は使用者にあります」と話します。

「使用者には、労働者がその生命・身体などの安全を確保しながら働くことができるよう、必要な配慮をしなければならないという『安全配慮義務』があります。

使用者が職場においてコロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で、従業員にマスク着用を義務付けるのであれば、労働者が安全に働けるような対策をとる責任を負っているのは使用者である以上、使用者が費用負担をしなければなりません」

菅義偉官房長官は2月21日の会見で、「今週は週1億枚以上の供給が確保されている」と話していましたが、店では今も売り切れ状態が続いています。花粉症シーズンが近づき、マスク需要はさらに高まっていますが、安定して入荷されるのをしばらく待つしかないようです。

プロフィール

笠置 裕亮
笠置 裕亮(かさぎ ゆうすけ)弁護士 横浜法律事務所
開成高校、東京大学法学部、東京大学法科大学院卒。日本労働弁護団本部事務局次長、同常任幹事。民事・刑事・家事事件に加え、働く人の権利を守るための取り組みを行っている。共著に「こども労働法」「就活前に知っておきたいサクッとわかる労働法」(日本法令)、「新労働相談実践マニュアル」「働く人のための労働時間マニュアルVer.2」(日本労働弁護団)などの他、単著にて多数の論文を執筆。

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