エステ業界大手「エステティックTBC」の福岡県の店舗に3月4日、労働基準監督署から是正勧告が出された。十分な休憩を与えず、従業員を長時間働かせた上、時間外労働に対する賃金も支払っていなかったという。
3月14日、当事者の一人である女性従業員が、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで会見し、「早く誰もが安心して働ける環境を作りたい。TBCには、子供がいても働きやすい会社になってほしい」と訴えた。
女性が加入する労働組合「エステ・ユニオン」は、TBCが従業員にタイムカードを押させつつ、残業代の支払いは自己申告制の手書き帳簿に基づいているとして、「全国約200店舗でも同様の法令違反が予想される」と話している。
●長時間労働で「子どもとかかわる時間が雑な感じでした」
この女性は30代の正社員で、9歳と6歳になる2人の子育て中。子どもができたことをきっかけに時短勤務者として働いてきたが、時短が時短として機能していなかったという。
始業時間の2時間ほど前の出社が常態化しており、休憩時間もカルテ記入や電話対応、無理なローテーションなどで、ほとんど休めなかったという。終業時間後の仕事もあり、7時間半の時短勤務だった時期でも、実質「過労死ライン」と言われる、月80時間ほどの時間外労働をした月があったという。6時間半勤務になってからも、実際には1日10時間近く働いていた。
育児にも追われており、女性は「残業で延長保育にすることもあった。休みも取れなくて、子どもの運動会の日に休みを希望しても、希望が通らなかった。朝はバタバタして、子どもをつい怒ってしまうことも。子どもとかかわる時間が雑な感じでした」と語った。
●15年間で200万を超える自腹購入
是正勧告の内容には含まれていないが、女性はTBC内で「自己購入」と呼ばれる、店舗の売り上げ目標をクリアするための自社商品の自腹購入も問題視している。強制ではないが、断りきれない雰囲気があったといい、購入額は多くて月4、5万円、少ない月でも1万円前後あったそうだ。女性は約15年間で化粧品など自社商品を200万円以上購入したという。
「目標というプレッシャーの中で働いていて、自己購入をほとんど毎月していました。それで辞めていくスタッフや体調を崩すスタッフもいてつらかった」
女性は現在、精神疾患で休職中。2013年11月から休職前の2015年9月までの未払い残業代は、約280万円になるといい、エステ・ユニオンを通した団体交渉で支払いや労働環境の改善を求めていくという。
弁護士ドットコムの取材に対し、TBCの広報は「勤怠管理のシステムも含め、事実関係を確認している。コメントは差し控えたい」と話している。