雇用保険制度の見直しが12月8日、決まり、失業手当の給付日数は、倒産や解雇で離職した人や、雇い止めで離職した人を対象に拡充することになった。
報道によると、一方で、自己都合で離職した人への給付拡充については、モラルハザードを助長するとの反対論があり、見送られた。
この決定に対して、ネットでは、「問題は、会社側のパワハラと本人の無知による粉飾された『自己都合』にされた退職」「リストラでも、会社側のゴリ押しで自己都合退職扱いにさせられるケースは結構あると思う」など、批判的な意見が寄せられていた。
今回の見直しについて、どう考えればいいのだろうか。竹之内洋人弁護士に聞いた。
●「自己都合」をどう考えるか?
自己都合退職と、倒産などの会社都合退職ではどんな違いがあるのか。
「現状、自己都合退職扱いの場合、退職から3か月間は失業手当の給付が受けられないことになっており、7日後から給付される会社都合退職の場合より不利な扱いとなっています。また、給付日数の点でも差がつけられています。
『保険』という性質からすると、支給対象『事故』である『失業』を自ら招いたのか否かということが問われるのはやむを得ないところもあります」
自己都合退職にも様々な種類があるのではないか。
「確かに、『自ら』といっても、そこには濃淡があり、人生のステップアップのために本当に自ら辞めていく人もいれば、退職強要、パワハラ、転勤命令、過酷な労働などのために辞めざるをえない状況に追い込まれた人もいるでしょう。
『自己都合』でくくられている中には後者の人も相当な割合を占めるのではないでしょうか。これらの場合、ハローワークの判断で会社都合扱いに変更されることもありますが、その壁は高いのが実情です。
また、低賃金でこき使われるブラック企業の労働者の中には、貯えもなく、現在の雇用保険制度では辞めた後の生活の見通しも立たず、やむなく勤務を続けている人もいるでしょう。
そういった『自己都合』の現実や雇用保険のセーフティーネット性を踏まえれば、給付内容の差はもっと縮小されるべきだと思います」