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ドイツに出向、残業100時間超で精神疾患に…現地版「裁量労働」の社員、労災認定
会見した笠置裕亮弁護士(5月24日、編集部撮影、都内)

ドイツに出向、残業100時間超で精神疾患に…現地版「裁量労働」の社員、労災認定

タイヤ大手のコンチネンタルタイヤ・ジャパン(東京都品川区)の社員(40代)が精神疾患を発症し、休職したのは出向先のドイツ本国での長時間労働にあるとして、品川労働基準監督署が労災認定した。代理人が5月24日、記者会見して明らかにした。認定は3月5日付。

代理人の笠置裕亮弁護士によると、この社員はドイツで日本の裁量労働制と似た制度(信頼労働時間制)で働いていたという。出勤・退勤時刻を定めず、労働時間を労働者の自由に委ねるというものだ。

しかし、実際には裁量がなく、取引相手である日本の自動車大手からのクレーム対応などに追われていたという。

通常、労働者が海外に派遣された場合は、現地の労災制度の対象になる。しかし、日本の労災制度に比して、対象や補償内容が十分でない場合があるため、日本の制度を利用できる「特別加入」の仕組みがある。

●労働時間に厳格なドイツ、周囲は定時上がりで負担増える

この社員は2016年6月にドイツに出向。翌2017年2月以降、クレーム対応を一手に引き受けることになったという。不良品をめぐり、日本の自動車大手とトラブルになったことから、工場など社内の各部署と調整を重ねたが、十分なサポートを得られなかったそうだ。

一般にドイツの労働時間規制は厳しいと言われている。この職場でも一般社員は定時で帰ったり、上司も長期休暇を取っていたようだ。その分、ドイツ版「裁量労働」だったこの社員に業務が集中してしまったと、笠置弁護士は分析する。

労働時間も管理されていなかったため、メールやファイルの更新日付などを参考に労災申請し、発症前4カ月から3カ月にかけて、時間外労働が倍以上に増え、おおむね月100時間以上あったと認定された。

笠置弁護士は、日本で裁量労働制の対象拡大が検討されていることを念頭に、「裁量が与えられていなければ、際限のない長時間労働に従事させられてしまう」と警鐘を鳴らした。

社員側は、国籍差別などのパワハラもあったと主張。「自分の業務だけでなく、同僚の業務の負担までも担っていました」などとコメントを寄せた。

コンチネンタルタイヤ・ジャパンは「担当者が不在で事実確認ができていない。現時点でのコメントは控えたい」としている。

(弁護士ドットコムニュース)

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