2014年08月23日 13時05分

小中高で「土曜授業」が復活の流れ――先生の「長時間労働」は問題にならないの?

小中高で「土曜授業」が復活の流れ――先生の「長時間労働」は問題にならないの?
子どもと教師、双方にとって良好な教育環境が整えられる必要がある

小中学校の「土曜授業」を復活させる流れが出てきている。文部科学省のアンケートに対して、『今年度、土曜授業を行う』と回答した公立小中高校の割合は16.3%で、2年前の約2倍に増えた。

学校教育法施行規則が改正され、教育委員会の判断で土曜授業を自由に実施できるようになったためだ。学習指導要領の改訂によって、増えた分の授業時間を確保するため、実施するケースが多いようだ。

一方、労働経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の中学校教諭の勤務時間は、先進国の中でも飛び抜けて長いという結果が出ている。昨年、全日本教職員組合が小中高の教員6900人あまりを対象に行った調査では、月80時間以上の時間外勤務をしている教員が35%に上るなど、過酷な労働環境が問題視されている。

土曜授業が増えれば、当然ながら教員の労働時間も増加する。こうした中、土曜授業をさらに増やしても大丈夫なのだろうか。教育問題にくわしい多田猛弁護士に聞いた。

●教員の負担は以前より増えている

「もともと、学校週5日制が導入されたのは、『ゆとり教育』の観点だけではなく、教職員の労働環境を改善することも目的の一つとされていました。それが週6日制に戻るとなると、当然、教職員に対するケアが重要な課題となります。

労働基準法32条1項によって、労働者の勤務時間は原則として、週40時間までと決まっています。このルールは教員にも適用されますが、日本の多くの教員はそれよりも長時間、残業をしています。『土曜授業の導入によって、残業時間の増加はより深刻になっている』との報告もあります」

なぜ、そんなに長時間、働くことになっているのだろうか?

「教員は、授業やその準備だけではなく、クラブ活動などでも多くの時間を割かれます。また近年は、研修や保護者・PTA対応など、児童・生徒の指導以外の業務がますます増加しています。

教員の中には、長時間労働を余儀なくされ、休憩や年次有給休暇も満足に取得できずに、『心の病』による休職をしたり、『過労死』したりする人も増えています」

そうした現状を変えるためには、どういったことが必要だろうか。

「教員の心身の健康を確保し、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を実現するための職場環境の整備が急務と言えます。

学校も労働安全衛生法の対象ですから、一定要件に該当し、疲労の蓄積が認められる教員には、医師の面接指導を行わせるなど、教員の健康に配慮する環境を整える必要があります。

また、予算の制約はあるでしょうが、教員が休憩や有給休暇、代替休暇を確保できるよう、代替教員を確保する措置も必要でしょう」

●「子どもと向き合う時間」をどう確保するか

「一方で、子どもの健全な成長という視点も重要です。土曜授業を実施する大きな目的は、『充実した学習機会を子どもに提供すること』であって、そこを忘れると、本筋から離れてしまいます」

教師の負担を軽減しつつ、子どもたちの学習環境を充実させることは、どうすれば可能だろうか。

「教員が『児童生徒と向き合う』時間を増やすためには、『いかに事務作業を減らすか』という視点が必要だと思います。

地域によっては、『ノー残業デー』『ノー会議デー』『ノー部活動デー』などを導入し、教員のワーク・ライフ・バランスを充実させる取組みを実施しているところもあります。事務作業の効率化には、IT環境の整備などの方策が行われています。文科省も、教員の勤務負担軽減に関して、各地の教育委員会の取組みを公表しています。

さらに、教員の役割分担・責任分担をハッキリさせ、児童・生徒の生活指導については、専門的職員や外部スタッフを配置することが考えられます」

まずは、事務作業の効率化が重要のようだ。

「さらに、部活動・クラブ活動について言うと、地域の外部指導者を活用することで、地域の雇用につながるとの指摘もあります。

『教員の負担軽減』とだけ言うと、批判をする人もいるかもしれません。しかし、あくまでも『子どもにより充実した教育を提供する』という観点から、教員に不必要な負担を課さない工夫が求められると思います」

多田弁護士はこのように指摘していた。

(弁護士ドットコムニュース)

多田 猛(ただ・たけし)弁護士
TTC法律事務所 代表弁護士。第二東京弁護士会・子どもの権利に関する委員会 幹事。
一般社団法人シニア総合サポートセンター理事。子ども・家庭の法律問題をはじめ、幅広い分野で活躍。
事務所名:TTC法律事務所
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