2014年08月02日 10時03分

「蟹工船や女工哀史に匹敵する」 すき家「調査報告書」を労働弁護士はどう読んだか?

「蟹工船や女工哀史に匹敵する」 すき家「調査報告書」を労働弁護士はどう読んだか?
報告書には、仕事のハードさを訴える声が複数掲載されていた

利益を重視した過酷な労働環境から「ブラック企業」という批判が高まっていた牛丼チェーン「すき家」。その状況を改善するため、すき家を全国展開するゼンショーホールディングスは第三者委員会(委員長:久保利英明弁護士)に労働環境についての調査と提言を依頼した。

第三者委員会がまとめた調査報告書は7月31日、ゼンショーによって公表されたが、そこには、すき家における過重労働や法令違反の実態が克明に記されていた。また、「居眠り運転で交通事故を3回起こした」「20キロやせた」といった従業員の生々しい声も紹介されていて、ハードワークがもたらした悪影響の一部が明らかになった。

今回の調査報告書を労働問題に取り組む弁護士はどう見ているのか。ブラック企業被害対策弁護団の代表をつとめる佐々木亮弁護士に話を聞いた。

●「目を覆うばかりの労基法違反が蔓延している」

――まず、ゼンショーが調査報告書を公表したことを、どう考えていますか。

「形式だけの調査ではなく、それなりに実態に踏み込んだ調査という第一印象を受けました。

本来であれば、企業が労働基準法を守っていないことは恥ずべきことです。にもかかわらず、労基法を守っていないことを赤裸々に記載しているところに、第三者委員会の本気度を認めることができます。

ゼンショーについても、この調査報告書を公表した態度自体は、それなりに肯定的な評価をすることができるでしょう」

――報告書の内容を読んだ感想を聞かせてください。

「目を覆うばかりの労基法違反が蔓延していることが明らかになりました。慢性的な長時間労働や、36協定違反、15分単位で労働時間を切り捨てる管理のずさんさなど、あげればキリがありません。まるで、労基法など『有って無いかの如く』のありさまです。

このような実態に対して、労基署から多くの是正勧告がなされていたことも明らかにされています。また、ゼンショー側が労基法違反となっていることを把握していたにもかかわらず、何ら改善を行わなかったことが、浮き彫りになっています。

このようなやり方で、ゼンショーが日本有数の大企業になったとすれば、その罪は途方もなく深いというべきでしょう。

これでは、『法律を守るほうが馬鹿を見る』という最悪の循環を生み出しかねません。いや、すでに最悪の循環を生み出していたからこそ、『ブラック企業』が社会問題になったといえます」

●「ブラック企業という指摘の正しさが裏付けられた」

――報告書に記載されている具体的な従業員の声を見て、どう思いましたか。

「いかにゼンショーが、従業員の時間や払うべき賃金、本来あるはずのプライベート、そして健康を吸い取って、自らを太らせる養分にしてきたかが分かります。

ゼンショーはこれまで多方面から『ブラック企業』と指摘されてきましたが、その指摘の正しさが裏付けられたといえるでしょう。

かつても、『蟹工船』や『女工哀史』など、過酷な労働環境を描いた文献がありました。本報告書は、それらに匹敵するほど、過酷な労働環境を記載した文献として、貴重だと言えます。

ゼンショーがこのような報告書を公表するに至った経緯は、『現代の逃散(ちょうさん)』とも言われた従業員の大量離職による店舗閉鎖がきっかけです。このような事態を招くまで、多くの労働者や労働組合、市民から『ブラック企業である』との批判を受けてきました。ゼンショーに調査報告書を公表させたのは、これらの批判が実ったものといえるでしょう」

――報告書の公表を受け、「すき家」の労働環境は改善するでしょうか。

「今後は、ゼンショーが労基法違反を是正できるかという点に、多くの市民の注目が集まるでしょう。この報告書の内容を忘れることなく、国民的な監視が必要です。

労基法は働くルールの最低基準です。そもそも、『最低基準』を守れていないことが大問題で、守ることが本来は当然なのです。

最低基準を守ることを成し遂げたとしても、ゼンショーが『いい企業』になるのではありません。普通の企業になろうとしているに過ぎないのです。こうしたこともまた、忘れるべきではないでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

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佐々木 亮弁護士
東京都立大学法学部法律学科卒。司法修習第56期。2003年弁護士登録。東京弁護士会所属。東京弁護士会労働法制特別委員会に所属するなど、労働問題に強い。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/labor
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