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外回りの営業ノルマ達成! あとは定時まで「映画鑑賞」でサボっても問題ない?
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外回りの営業ノルマ達成! あとは定時まで「映画鑑賞」でサボっても問題ない?

「仕事中にがっつり2時間、映画を見てしまったんです」。かつて不動産会社で営業職に就いていたメグミさん(27)は、こう切り出した。

さかのぼること5年前のある秋の日、当時社会人1年目だったメグミさんは、投資用マンションを販売する営業職として外回りをしていた。営業手法は、いわゆる「飛び込み営業」。オフィスに突撃し、名刺交換をした相手に、後日電話でアポイントを取るというやり方だ。

「毎朝、上司から『今日は●枚名刺をもらってこい』とノルマを課されていたのですが、その日はたしか30枚程度だったと思います。ふだんは朝から18時ごろまでかけずり回ってようやくノルマを達成するんですが、その日はたまたま15時くらいで達成して・・・」。

早く会社に帰っても別の仕事を押し付けられる、そう思ったメグミさんが向かった先は、映画館だった。「夕方まで時間をつぶそうと、以前から気になっていた映画を見ました。鑑賞中は携帯の電源をOFFにしていたので、『もし上司から電話がかかってきてたらどうしよう』とドキドキでした」。映画観賞後、18時すぎに会社に戻った。上司にはバレなかったという。

メグミさんが当時働いていた会社では「定時は9時から18時まで」と就業時間がきっちり決まっていた。その日のノルマを達成し、他にやる仕事がなかったからとはいえ、就業時間中に映画を見てサボることは、法的に問題ないのだろうか。中村新弁護士に聞いた。

●ノルマを達成しても、残り時間が自由というわけではない

「雇用契約は、労働者が使用者(会社など)に労務を提供し、使用者がその対価として給与を支払うという契約です。

雇用契約上の労使双方の権利義務の内容は、雇用契約書や就業規則で定められますが、今回のケースでは『定時は9時から18時まで』と決まっていたので、おそらく就業規則でも、勤務時間が9時から18時までと定められていたものと思われます。

そうすると、労働者は、休憩時間を除いて9時から18時までの間は、働く義務を負うこととなります。

これはノルマを課される営業職の場合も同様です。完全出来高制の業務委託契約であれば別ですが、勤務時間が9時から18時までと定められた雇用契約の場合、いかに早くノルマを達成しても、残りの時間を自由に使ってよいということにはなりません」

●繰り返していると重い処分になる可能性も

では、映画を見る行為は、問題になりうるということだろうか。

「メグミさんは定時をきちんと定められている上、外回りの間も、随時携帯電話で上司の指示を受ける形で稼働していたのですから、メグミさんと会社の契約を『業務委託契約』だと考える余地はまずないでしょう。

また、映画を見ていた時間が15時から2時間ということですから、これを休憩時間の消費と見ることも一般的には困難です。ですから、メグミさんの行為は、会社の就業規則に違反する可能性が高いと言わざるをえません」

処分を受ける可能性もあるのか。

「会社の就業規則に、懲戒処分の種類と事由が定められていて、行為が懲戒事由に該当する場合、懲戒処分を受ける可能性があることは否定できません。

ただ、1回限りの行為であれば、真摯に謝罪すれば、懲戒処分までには至らない可能性もあるでしょう。仮に懲戒処分となっても、譴責もしくは訓戒といった軽微な処分だと思われます。

ただし、このような行為が複数回に及んだ場合には、出勤停止などのより重い懲戒処分が下されるかもしれないので、注意が必要です」

中村弁護士はこのように話していた。ちょっとしたサボりは誰にでもありそうだが、ほどほどにしておいた方ほうがよさそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中村 新
中村 新(なかむら あらた)弁護士 銀座南法律事務所
2003年、弁護士登録(東京弁護士会)。現在、東京弁護士会労働法制特別委員会委員、2021年9月まで東京労働局あっせん委員。2023年4月より東京労働局労働関係紛争担当参与。労働法規・労務管理に関する使用者側へのアドバイス(労働紛争の事前予防)に注力している。遺産相続・企業の倒産処理(破産管財を含む)などにも力を入れている。

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