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「有期雇用」10年まで更新へ 「政府の新方針」で働き方はどう変わる?
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「有期雇用」10年まで更新へ 「政府の新方針」で働き方はどう変わる?

1年間など期間限定で働く「有期雇用契約」。契約社員がその典型で、もし契約が更新されなければ失業してしまう不安定な状態と言える。

そうした状態を改善するため、今年4月に施行された改正労働契約法に、ある《ルール》が盛り込まれた。それは《有期雇用契約が5年を超えて反復・継続されれば、期間を定めない無期雇用契約に変えられる権利が与えられる》という内容だ。

ところが報道によると、政府はこのほど、この権利が発生する条件を、5年超から「10年超」に変更する方針を固めた。さらなる改正法案は来年、国会に提出される見込みだという。

たしかに、今春始まった《ルール》には、拒否反応も出ている。有名私大や大手喫茶チェーンなどが法施行直前に契約更新を打ち切ったり、「5年経つ前に契約更新をやめる」という方針を打ち出すなど、社会問題となっているのだ。

どうやら単純な問題ではなさそうだが、いま有期雇用契約で働いている人たちは、新しい政府方針をどう受け止めればいいのだろうか。日本労働弁護団事務局次長をつとめる今泉義竜弁護士に聞いた。

●「10年」では本来の目的は骨抜きになる

「4月に施行された改正労働契約法18条は、不安定な有期契約で働いている労働者が安心して働き続けられるようにしようという目的で、『働いている人の希望によって期間を定めない契約に転換できる権利(無期転換権)』を創設したものです。

現在の『5年』という期間は諸外国と比較しても長く、たとえば韓国では2年、スウェーデンは3年、イギリスでは4年で無期転換されるというようになっているようです」

現制度の5年ですら十分「長い」といえそうだ。それをさらに延長するというのは、どんな意味をもつのか?

「『10年』に延長するというのでは、この無期転換権はほとんど意味がなくなるでしょう。『安心して働き続けられるようにする』という本来の目的は骨抜きになってしまいます。

たしかに、今問題となっている『5年直前での雇い止め』の危険は少なくなりますが、10年にわたって雇い止めの恐怖のもとにさらされて働かなければならないことになるのです。このような改正は食い止めなければいけないと思います」

しかし、そうなると現在にわかに問題となっている「5年で雇い止め問題」については、どのように対処すべきなのだろうか。

●雇用契約が「反復継続」されていれば、簡単に雇い止めはできない

「ここで有期労働者のみなさんに知ってほしいのは、改正労働契約法19条です。雇用契約が何度も反復更新されている場合や、更新されるという期待がある場合には、雇い止めが規制され、納得のいく理由のない雇い止めは無効となります」

19条は、ざっくり言うと、雇用の実態が無期契約と実質的に変わらないような場合や、契約継続が期待されている場合、会社が雇い止めをするためには「合理的な理由」などが必要、という内容だ。

そうなると、たとえば5年目や10年目で「雇い止め」を告げられたケースにも、この19条で対応できる可能性はあるのだろうか?

「無期転換権の発生を阻止するために、契約や就業規則に『契約更新は5年まで』という更新上限規定を定めてしまう例も、最近は散見されます。しかし、このような規定を作ったからといって、この19条の適用を免れることはできません。

このような『更新上限規定』は無効である、と述べている裁判官もいます。更新上限規定を契約に入れられそうになったり、雇い止めにあったりした場合には、決して自分だけで抱え込まずに、労働問題にくわしい弁護士や労働組合に相談してほしいと思います」

今泉弁護士はこのように述べ、注意を呼びかけていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

今泉 義竜
今泉 義竜(いまいずみ よしたつ)弁護士 東京法律事務所
2008年、弁護士登録。労働者側の労働事件、交通事故、離婚・相続、証券取引被害などの一般民事事件のほか、刑事事件、生活保護申請援助などに取り組む。首都圏青年ユニオン顧問弁護団、ブラック企業被害対策弁護団、B型肝炎訴訟の弁護団のメンバー。日本労働弁護団、青年法律家協会、自由法曹団所属。

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