本格的な就職活動を来年に控えた大学3年生にとって、夏休みは遊んでばかりもいられない時期だ。資格スクールに通う学生がいる一方で、企業や官庁のインターンシップに参加する学生も多い。
インターンシップは、学生の「就業体験」の場であって、「労働」ではないというのが建前だ。だが、海外の有名企業では、連日、長時間のインターンシップに参加した学生が「過労死」とも思える状況で死亡した事例も報告されている。
これは極端なケースだとしても、インターンシップの最中に事故にあって、ケガをしてしまうことはありうるだろう。もしインターンシップ中に学生がケガをした場合、労災は適用されるのだろうか。労災問題にくわしい古川拓弁護士に聞いた。
●インターン学生が「実質的に労働者」なら労災の対象になる
「インターンシップ中であっても、労災が適用される可能性があります」
――すべてのインターンシップでそうなる?
「実質がどうかによります。たとえ形式が『インターンシップ』であったとしても、実質的に見て『労働者』であると評価される場合には、労災保険の適用を受けることができます。」
――単なるインターン学生か労働者かの線引きは?
「『労働者』かどうかを判断する基準は、行政通達などで示されています。大まかにまとめると、以下のようなポイントが、労働者として認められる場合です。
(1)見学や体験的なものを超えて、インターン学生が直接生産活動に従事させられている
(2)企業とインターン学生との間に『使用従属関係』がある
さらに、(3)金銭支払いの有無やその額なども考慮要素にはなりますが、企業がわざとインターン扱いして人件費をカットしているケースもあるので、(1)と(2)が重要です」
――具体的には?
「具体的に列挙すると、次のような実態があれば、労働者であると判断される可能性が出てきます。
・業務内容が軽い補助作業のレベルを超えている
・インターン学生を戦力にあてこんだ人員体制になっている
・現場のやりとりが実習指導のレベルを超えて、指揮・指示と評価できる
・遅刻・欠勤すると企業から制裁される
・作業指示を断れない
・時間的・場所的に拘束されている
・期間中、別のアルバイトが禁止、または事実上できない」
――もし「労災」にならなかったとしても、ケガなどをすれば補償はある?
「仮に労働者であると評価されない場合でも、施設管理やインターン学生に対する安全管理などについて企業に過失があれば、受入れ企業に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求が可能となる場合があります。
インターンシップで事故などに遭った場合は、あきらめてしまわずに、一度は労災申請や賠償請求をご検討になるとよいでしょう」