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勤務先の不正を通報してから辞める「密告退社」が話題・・・そんなことして大丈夫?
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勤務先の不正を通報してから辞める「密告退社」が話題・・・そんなことして大丈夫?

会社の不正を労基署などに通報してから辞める「密告退社」がツイッターに投稿され、話題になった。

投稿者の周囲では最近、ブラック企業を辞める友人が多いそうだが、「必ずみんな『不正経理の証拠』とか『社長の横領』みたいな面白情報を労基や警察や税務署にチクってから退社する」という。通報した結果、「その会社が翌年大体なくなっている」ために、次の会社に転職する際、面接で「何故やめたのか」と聞かれても「つぶれたので・・・」と言えるそうだ。

このツイートに対しては、「これは良い辞め方」「やめた理由をつぶれたからにすれば相手も納得しやすい」といった声があがっていた。ただ、通報したことによって会社がつぶれれば、通報者は、経営者や他の従業員から恨まれる可能性もある。「密告退社」にリスクはないのだろうか。山本雄大弁護士に聞いた。

●民事上、刑事上の責任が追及される可能性

「勤務先(会社)における不正行為について、会社内部や行政機関、第三者に通報する場合、正当な通報であれば、公益通報者保護法等により、解雇や不利益取扱い等から通報者は保護されます。

しかし、通報により会社の信用を毀損することになる場合等には、会社から損害賠償請求を受けることもあります。もし不正行為の証拠の持ち出しをしていれば、窃盗等として刑事責任が追及される可能性もあります。

公益通報者保護法は、これらの通報者の民事上、刑事上の責任について特に規定を設けていません。これまでの通報に関する判例においては、通報された不正行為の内容、真実相当性、通報の目的、通報先、通報態様や通報経緯等を考慮して、その責任の有無が判断されています」

密告退社についてはどうだろうか。

「『密告退社』についても、先ほど説明したように民事上、刑事上の責任が追及される可能性があり、リスクがないとはいえません。特に今回話題になった『密告退社』の場合、通報の目的が公益目的といえるのかも問題になりそうです。

また、通報内容の真実相当性については、通報者が立証しなければならず、通報内容を裏付ける証拠が必要になります。その一方で、会社の資料の持ち出し行為自体について刑事責任等が追及されることもあり、通報自体が正当なものかを含めて慎重な検討が必要です。安易に必要な証拠を集めればよいと考えるのは危険です。

なお、公益通報者保護法は、通報者を密告者扱いする日本の社会風土を変え、通報者を保護して社会の透明性を高め、公正な社会を実現するために2006年(平成18年)に施行されたものですが、いまだに『密告』という言葉が用いられることは残念です」

山本弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

山本 雄大
山本 雄大(やまもと たけひろ)弁護士 藤巻・山本法律事務所
1995年弁護士登録(大阪弁護士会)、欠陥商品被害救済を中心に消費者問題に取組む。公益通報者保護についても法制定時から取組み、内閣府消費者委員会に設置された公益通報者保護専門調査会では委員を務めた。

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