連載予告されていたマンガ作品の掲載が、2日前に急きょ「取り消された」として、ネット上で話題になっている。
作者のやまもとありささんによると、マンガの連載は、コアミックス社が運営するネット上のマンガサイト「コミックぜにょん」で、6月29日から行われる予定だった。ところが、その2日前になって編集者から連絡があり、「単行本を委託している出版社が『有害図書指定に当たりうる』と判断した」として、連載取消を報告されたのだという。
やまもとさんは、3月中旬に連載打診の連絡を受けてから、6月29日の連載開始を目指して準備していた。週に3回ほどのペースでアシスタント一人にも手伝ってもらい、原稿5話分と、5枚のカラーに加え、ネームを数話書き溜めていたという。
ネット上では、「気の毒すぎる」「訴訟レベルだ」と、直前の連載取消しという対応について批判的な声が目立つ。原稿料が支払われるのかという点を気にする声も少なくない。
漫画家や小説家は、掲載先から連載を急に取り消された場合、用意していた原稿の作業料を請求することができるのだろうか。それとも、掲載に至らなかった原稿については、あきらめるしかないのだろうか。小野智彦弁護士に聞いた
●突然の連載中止による損害は、補償されるべき
「2日前に連載中止ということは、WEB連載とはいえ、この段階で既に何話か分の原稿を出稿しているはずです。実際に出版されるかどうかにかかわらず、出稿した分の原稿料は払ってもらえると思います。
出版された場合の売り上げに対する印税は、別途約束があるはずです。また、原稿料はとても安く抑えられていて、手間賃相当額に過ぎないのが通常です。実際の手間賃としての原稿料の請求はできてしかるべきでしょう」
アシスタントに支払った賃金は、自腹になってしまうのだろうか。
「アシスタントの給料なども補償されるか、ということについては、難しいように思います。アシスタントは、作者が個人として雇っているわけですからね」
●「有害図書に当たりうるか」は前の段階で予測できるはず
連載が中止になった理由は、関係するだろうか。
「今回話題になったマンガは、『有害図書指定に当たりうる』との理由で急遽中止になったようです。
しかし、有害図書指定に当たりうるかどうかは、作者がネームを編集者に見せた段階で、ある程度は予測できるはずです」
たしかに、編集者が、適切に指導すれば、有害図書指定を受けるリスクを排除して掲載できた可能性はあるだろう。
「また、出版に至るまでの期間は、連載開始の段階であれば、それなりに準備期間があるでしょう。そうした意味でも、突然の連載中止による損害は、補償されてしかるべきと考えます」
小野弁護士はこのように述べていた。
やまもとありささん本人に確認をとったところ、書き上げていた5話分についてはその後、「掲載元から原稿料が支払われた」ということだった。今後は、他媒体での連載を目指して、積極的に売り込んでいきたいということだ。