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「秘密保護法は憲法の基本原理と矛盾する」 憲法学者が「3つの原理」との関係を説明
特定秘密保護法の問題点について講演する右崎正博・獨協大学教授

「秘密保護法は憲法の基本原理と矛盾する」 憲法学者が「3つの原理」との関係を説明

秘密保護法は、憲法を否定するものなのか――特定秘密保護法について考えるシンポジウム「学生・市民と考える秘密保護法」(主催・民主主義科学者協会法律部会)が7月13日、東京・新宿区の早稲田大学で開かれ、憲法学者や政治学者が同法の問題点を語った。

昨年末、与野党が激しく対立する中で成立した特定秘密保護法。国家機密を漏らした人への罰則を定めたこの法律は目下、年内の施行をめざして準備が進められているが、今もなお異論が絶えない。

中学校の社会のテストで「日本国憲法の3つの基本原理は?」と問われたとき、「国民主権・人権保障・平和主義」と答えれば正解だ。登壇した右崎正博・獨協大学教授(憲法学)は、これらの基本原理と特定秘密保護法が「根本的に矛盾しており、憲法を否定している」という。

●「国民主権の基盤が失われてしまう恐れ」

問題点は、いったいどこにあるのか。まず、国民主権とは、国民が国政について最終的な決定権をもっていることだが、特定秘密保護法によって国民主権が阻害されてしまうのは、どういうことだろうか。

右崎教授は「国民主権が正常に機能するためには、国民が国政についての情報を十分持つこと、その情報へのアクセスが容易であること、そして、その情報によって主権者が意思を形成できることが前提」と説明する。

これに対し、特定秘密保護法は「防衛・外交・有害活動防止・テロリスト防止という、国民が大きな影響を受ける重要な問題の情報の入手や伝達を厳しく制限している。これでは、国民主権の基盤そのものが失われてしまう」と批判した。

一方、人権保障について、日本国憲法では“侵すことのできない永久の権利”として、さまざまな基本的人権が定められている。その中でも重要だとされているのが、取材の自由や知る権利を含む「表現の自由」(憲法21条)と、プライバシー権などを包括的にカバーしている「幸福追求権」(憲法13条)だ。

この点、右崎教授は「特定秘密保護法は取材や報道の自由を制限しており、知る権利が制約される危険性が大きい。(特定秘密に関わる職員や関係者の情報を調べる)適性評価制度も、プライバシーの権利を侵害する危険性が大きい」として、同法によって表現の自由や幸福追求権が制限されることについて懸念を示した。

3つ目の平和主義に関して、右崎教授は「軍事や防衛に関する情報は、平和主義の原則に従ってより厳しく精査しなければならない」と指摘。それにも関わらず、この法律は「国民の生存を左右しかねない重要な情報であればあるほど、かえって国民の目から遠ざけてしまう」と批判した。そのうえで、「防衛や安全保障についての情報を公開して、国民の監視下に置くことこそが、平和主義の求めるものだ」と主張した。

シンポジウムではこのほか、渡辺治・一橋大学名誉教授(政治学)が「戦前の秘密保護法制に比べて、特定秘密保護法は秘密の範囲が広く、メディアを標的にしていることが特徴」と説明。村井敏邦・一橋大学名誉教授(刑事法学)は「この法律に違反した場合、捜索が大規模に行われる可能性がある。仮にA社の情報が漏れた際、A社に関わるすべてのPCが差し押えられることも考えられる」と起こりうる事態について懸念を表明した。

(弁護士ドットコムニュース)

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