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遺産ゲットで豹変した甥、祖母の世話は「俺の義務じゃない」 恐怖の内容証明
画像はイメージです(kotoru / PIXTA)

遺産ゲットで豹変した甥、祖母の世話は「俺の義務じゃない」 恐怖の内容証明

祖父母、子、孫の3世帯同居で起こった、ある相続トラブル。巻き込まれた女性が、弁護士ドットコムに質問を寄せました。今回、トラブルの発端となったのは、女性にとっては「甥っ子」にあたるA男(祖父母の孫)が女性に宛てた内容証明郵便でした。

A男の父は、女性にとっての兄です。この3世帯住宅には元々、祖父母と子夫婦(A男の両親)、孫(A男)の5人が暮らしていました。

A男の祖父(女性にとっての父)が亡くなり、祖父の子であるA男の父も、祖父の相続手続中に亡くなりました。そのため、預金は祖母のY子(女性にとっての母)が、A男は不動産(3世帯住宅)を相続しました。なお、女性は甥のA男が祖母Y子の面倒をみてくれるのだろうと期待し、相続放棄をしたそうです。

ところが、相続手続きが終わると、高齢のY子の面倒を見たくないのか「自分には扶養義務がない」と言って、投稿者にY子を引き取るよう内容証明を送ってきました。投稿者はY子を引き受けるつもりですが、であれば、A男に不動産を相続させたくなかったという思いがあります。

A男の言うように、孫に扶養義務がないというのは本当なのでしょうか。新保英毅弁護士に聞きました。

●祖母の扶養義務は「子ども、孫」ともにある

ーーそもそも祖母Y子の扶養義務は、誰に、どのように定められているのでしょうか

「Y子に対する一般的な扶養義務は、娘である相談者と孫であるA男の両方にあります。民法には『直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある』(877条1項)と定められています。

ただし、扶養義務を負う人が複数いる場合、誰が扶養するのか、具体的にどのような方法でどの程度の扶養をするのかについて、当事者間で協議ができない場合は、家庭裁判所に申立てを行うことにより裁判所が審判で決めます(民法878条、879条)。

そして、家庭裁判所が扶養の程度・方法を決めるとき『扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮』します」

ーー今回の相談事例は、どう考えられますか

「家庭裁判所が、A男にY子を引き取って扶養することを命じる審判をすることは十分考えられます。

なぜなら、相談者の父(A男の祖父)の相続について、預金はY子が、三世帯住宅不動産はA男がそれぞれ相続し、相談者は相続放棄したという事情があるからです。これは、A男が本件不動産でY子の面倒を見ることが相続の際の当事者間の暗黙の了解になっていたと評価できます。

ただし、Y子にまだ充分な預金が残っている場合、金銭面での援助はしなくてよいと判断されるでしょう」

ーーもし仮に、A男が扶養を拒否し続けた場合には、A男名義となった不動産から、祖母のY子は追い出されてしまうのでしょうか

「家庭裁判所がA男にY子の扶養を命じない場合でも、上記のような相続の経緯からすると、相続により三世帯住宅不動産がA男名義になった後もY子がそのまま住み続ける権利が認められる可能性はあります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

新保 英毅
新保 英毅(しんぼ ひでたか)弁護士 新保法律事務所
2004年弁護士登録。相続・遺産分割事件、中小企業の法務の案件を多く取り扱っている。モットーは「依頼者ひとりひとりに適したオーダーメイドのサービス」。

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