結婚式の余興で獲得した賞金「30万円」を新婦から返せと要求されている、応じるべきかーー。そんな女性の悩みがネットの掲示板で話題になった。
投稿者は、会社の先輩女性の結婚式に参加した際、披露宴の余興の参加者に指名された。投稿者は勝ち抜き式の余興で見事に優勝し、賞金30万円を獲得した。ところが、後日先輩から「余興だから30万返して」と言われた。あくまで余興を盛り上げるために後から返してもらう意図で、賞金を設定したようだ。
本人はもともと後から返還を要求するつもりだったようだが、「賞金」として設定して、いったん渡したお金を、後から「返せ」と要求できるのか。投稿者は、返還要求に応じる必要があるのか。萱垣建弁護士に聞いた。
●原則として、返還する必要はない
「余興やケームなどで景品・賞品をもらう場合、無償でもらうわけですから、法的には、主催者からの贈与が行われたと考えられます。
贈与は、書面を作成しないで口頭で約束した場合は撤回することができます(民法550条)。しかし、既に実行された部分は撤回することができません(民法550条ただし書き)。
今回の場合、既に賞金30万円をもらっていますので、主催者側は撤回することはできない、つまり、投稿者が返還要求に応じる義務がないことが原則です」
萱垣弁護士はこのように指摘する。ただし、返還に応じなければならないケースもあるようだ。
「今回のケースのように、本心ではお金を渡すつもりはないのに、外部に『賞金としてあげる』と述べていたような場合、内心と外部の表示は食い違っていて、そのことを本人も認識していることになります。これを、法律的には『心裡留保』といいます。
『心裡留保』のケースでも、契約の意思表示は有効です(民法93条)。ただし、意思表示の相手方が真意を知っていたか、あるいは知ることができた場合には、無効になります(民法93条ただし書き)。
今回のケースでいえば、余興やゲームが始まる前に、『余興やゲームの進行上、形式的に渡すだけで、後に返すことにする』という話し合いがあった場合、または、明確に話し合ったわけではないが、後に返すことが当然だと分かっていた場合には、先輩の真意を知り、または知ることができた状態といえるでしょう。
この場合、お金の贈与契約は無効ということになりますから、投稿者はお金を返還しなければならないことになります。
もっとも、今回の場合、主催者側は、後に返還を要求するつもりだったということですが、参加者側には、そのことが分かっていなかったようです。
友人関係がどうなるかは別として、『あれは単に盛り上げるためで返してもらうつもりだった』といっても、それに応じる必要はないでしょう」