熟年離婚が増えている昨今、成人してから両親が離婚することになったという人も少なくないはずだ。そのとき、名字はどうなるのだろうか。
長いあいだ慣れ親しんだ名字でも、両親の離婚によって変更を迫られることがあるのだろうか。女性の場合、名字が変われば結婚したのかと周囲に思われるだろうし、「実は両親が離婚しまして…」と説明するのも少し気が引ける。
子が成人してから両親が離婚した場合、子の名字はどのように決まるのか。父と母のどちらの苗字になるのか。子が自らの意思で選択することはできるのか。また、子自身も何か特別な手続きをする必要があるのだろうか。大和幸四郎弁護士に聞いた。
●母親が離婚するときに「旧姓」に戻すかどうかで違いが出る
「ときどき、ある問題です」と言いながら、大和弁護士は次のように説明する。
「まず、成人の子が結婚等によって元の戸籍から外れている場合、その子の姓はそのままになります」
結婚していれば、その夫婦の姓をそのまま名乗ることができるというのは、当然といえるだろう。問題は、子が独身の場合だ。一般的には、母親が結婚と同時に名字を変えていることが多いので、以下ではそのようなパターンを想定して説明するが、離婚のときに、母親が名字を旧姓に戻すかどうかで違いが出てくるという。
「両親が離婚すると、父親と母親は別々の戸籍になりますが、母親が元の名字に戻さず、父親と同じ名字を名乗ることもできます。その際、子はどちらかの戸籍に入ることになるのですが、父親と母親の名字は同じなので、子は父親の戸籍にいようと、母親の戸籍に移ろうと、名字は今のままで変わらない、ということになります」
ちなみに、成人している子は「分籍」という手続きをして、自分だけの戸籍を持つこともできるという。
●旧姓に戻した母親と同じ名字を名乗るには、家裁への申し立てが必要
では、母親が名字を旧姓に戻す場合、子の名字はどうなるのか。
「まず、成人の子が名字を母親の姓にしたくないのであれば、父親の戸籍に入ったままにしておくか、『分籍』によって父親の戸籍から抜けて、自分自身の戸籍を作るという方法があります」
つまり、何もしなければ、名字はそのまま変わらないということだ。では、旧姓に戻した母親と同じ名字にしたい場合はどうすればいいのだろう。
「その場合は、家庭裁判所に『子の氏の変更許可』を申し立てる必要があります。家裁から変更許可を受けて、『入籍届(別の戸籍に入る届で婚姻とは関係ありません)』を役所に出せば、母の戸籍に入ることになり、母親の姓を名乗ることができます」
このように成人してから両親が離婚した場合、その子は、戸籍に関する手続きをすることで、父親と母親の名字のどちらも名乗ることができるということだ。もちろん、今までの名字を名乗ることもできる。どちらを選ぶかは、自分の意思しだいなのだ。