配偶者との死別後、その親族との法的な関係を終わらせるための書類「姻族関係終了届」。義実家との関係に悩んでいる人にとっては、夢のような書類と言えるかもしれません。関心がある人は少なくないようで、弁護士ドットコムで記事を掲載したところ、コメント欄には姻族関係終了届に関する様々な疑問が投稿されていました。
「夫が亡くなる前に、義理両親と縁を法律的に切れる方法は有りませんか?」(30代女性)
「扶養義務から解放され、でも我が子は義両親の相続権を持ち続けられる。そんな、ウマイ話があっていいのでしょうか?」(30代女性)
「この場合の夫の遺産相続率みたいのはどうなるのでしょうか」(40代男性)
「お姑さんから残ったお嫁さんを切ることも可能なのかな?」(50代女性)
最近、各メディアで、姻族関係終了届を提出することを「死後離婚」として扱っているケースも見かけますが、姻族関係終了届に関するこのような疑問について、法律ではどうなっているのでしょうか。増田勝洋弁護士に聞きました。
●姻族関係終了届の疑問、法律のルールは?
まず、配偶者が存命中の場合は提出できません。この制度は民法728条2項に基づいており、一方の配偶者が死亡しないと提出できないことになっています。
姻族関係を終了しても、遺族年金の受給資格は失われませんので、届を提出しても配偶者の遺族年金を受け取れます。また、届を提出した人と配偶者の親との姻族関係が終了しても、その子どもと配偶者の親は、孫と祖父母として血が繋がっています。この繋がりは届を提出してもなくならないので、孫は祖父母の遺産を「代襲相続(民法887条2項)」できます。
配偶者の親や兄弟の側から姻族関係終了届を提出することはできません。「片手落ち」との批判もあるようですが、現状の法律では認められていません。
メディアでは、姻族関係終了届を提出することを「死後離婚」と呼ぶこともあるようです。生前に離婚をすれば配偶者の親族との姻族関係は自動的に終了します。しかし、配偶者が死亡した場合は、姻族関係は継続しています。その関係を配偶者の死亡後に終了させる手続だという意味で、姻族関係終了届を提出することを「死後離婚」と呼んでいるのかもしれません。
しかし、そもそも離婚は婚姻関係を終了させることですが、姻族関係終了届を提出する手続はあくまで姻族関係を終了させる効果があるだけです。法的な意味での「離婚」とは言えません。
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