妻がエホバの証人の信者だったことが、結婚して子どもができた後に偶然発覚。「私が嫌がっているのに信仰を続ける意味がわからない」という男性からの相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者によると、妻は子どもの頃からの信者でしたが、相談者には結婚の際にも告げていませんでした。布教活動もやっており、相談者は、自身の知人からそのことを聞いて知ったそうです。
相談者は「家族の幸せのため」「もうやめられない」という妻と離婚したいそうですが、「離婚の話を持ちかけようとすると一切話を聞かなくなります」と困っています。どうすれば離婚ができるのでしょうか。鈴木菜々子弁護士に聞きました。
●婚姻関係が破綻したといえるかどうか
妻がどうしても離婚に応じてくれない場合は、最終的には裁判で離婚を認めてもらう必要があります。その場合は、妻の信仰や布教活動が離婚原因にあたるかということが問題になります。
まず、信仰や布教活動そのものは離婚原因にならないと考えられます。日本では、信教の自由が憲法で保障されており、特定の宗教を信仰したり宗教活動をしたりする自由が認められてます。信仰や布教活動そのものを裁判所が離婚原因として認めることは間接的に信教の自由を制限することになるので、許されないと思われます。
もっとも、離婚原因の有無は、婚姻関係の破綻の有無によって決められます。そのため、信仰や布教活動が原因となり婚姻関係が破綻したと認められる場合は、離婚が認められることもあります。
ただし、信教の自由の保障の観点からは、妻の信仰や布教活動が婚姻生活を営むうえで何ら影響を与えておらず、妻も夫に配慮しているのに、夫が頑なに妻の宗教を認めていないというだけでは、離婚が認められない可能性もあります。
実際のところ、このようなケースはお互いが自分の考えに固執して譲らず、不仲になるということがほとんどでしょう。
いずれにしても、そのことを裁判所に認めてもらうために、妻の宗教活動の記録や、夫婦間での話し合いを録音等で記録化しておく等の証拠集めが必要になります。
なお、妻が結婚の際に信仰のことを夫に告げていなかったことも、それ自体は離婚原因にならないと思われます。しかし、信仰のことを知った上で結婚したケースに比べれば、夫が妻に不信感を抱き、夫婦関係が不和になったとしてもやむを得ない面があると評価される可能性が高いと思われます。
他の事情と併せてにはなりますが、妻が結婚の際に信仰のことを告げていなかったことは、離婚が認められやすくなる事情の一つになり得るといえます。