浪費癖のある夫を信用できなくなり、セックスレスになってしまったという女性から、離婚理由になってしまうのか?と、相談が寄せられました。
夫は結婚当初からカードローンや貯金の使い込みがあったといいます。相談者が妊娠した際に、夫は「心を入れ替える」といったそうですが、出産後になって貯金の使い込みが発覚したのです。
それがきっかけで相談者は夫を信じられなくなり、「身体が触れ合う事が嫌でたまらなくなってしまった」といいます。
相談者は、日常生活で普通に会話をすることはできるそうですが、出来ればこのままずっとレスの状態でいたいそうです。その一方で、レスを原因に離婚を切り出されるのではないかと心配しているとも言います。森本明宏弁護士に聞きました。
●夫が離婚を望んだ場合には?
ーー今後もし離婚を夫が望んだ場合、相談者はどう対応すればよいのでしょうか
夫がセックスレスを理由として離婚を求めてきても、それを拒むことができます。夫がどうしても離婚を求めるということであれば、夫はあなたに対して離婚訴訟を起こす必要があります。
この離婚訴訟において離婚が認められるためには、民法770条1項で定められた離婚原因があると判断されることが必要となります。
セックスレスを理由として離婚訴訟を起こす場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)に該当するとして、それを離婚原因として起こすことになろうかと思います。
ーーどんな背景があっても、セックスレスは離婚理由となるのでしょうか
夫婦間のセックスレスについては、過去の裁判例において、夫婦間の正常な性生活を妨げる事情であるとして、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断をされているものがあります。
もちろん、セックスレスと言っても、それに至った原因やその期間など、事案ごとに異なります。セックスレスが全て一律に「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとは必ずしも言えないでしょう。
例えば、セックスレスに至った原因について、配偶者が性交渉を求めているにもかかわらず何の理由もなく拒否する場合なのか、それとも、拒否することについての相応の原因が配偶者にある場合なのか、などを考慮する必要があります。
また、セックスレスの期間が比較的短期間であるのか、長期に及ぶのかについても考慮する必要があるでしょう。
●セックスレスの原因が「浪費や借金癖」だった場合には?
ーー今回の事例では、どう判断されますか
相談者によれば、セックスレスに至った原因の一端は、夫の浪費や借金癖ということです。
浪費や借金の額にもよりますが、その金額が今後の家計の維持に影響を及ぼすような場合であれば、約束を破った夫に対する信頼が薄れ、精神的に性交渉に応じることが困難となったことについて、相応の原因が夫側にあると言えるでしょう。
その場合、セックスレスの期間が例えば今後5年、10年と長期に及んでくれば、また別の判断はあり得ますが、そうでない限り、セックスレスであることの1点だけをもって「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして離婚が認められる可能性は低いと考えます。
相談者に対する慰謝料が発生するかどうかの点ですが、セックスレスの原因の一端が夫側にあり、正当な理由なく拒否をしているわけではありません。もっぱら相談者に有責性があるとはいえず、夫が慰謝料請求をすることは困難であると判断します。