夫と不倫していた近所のママ友のことを周りの人にバラしてしまいたいが、慰謝料請求されないか——。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者は、夫と離婚する方向で話が進んでいます。一方、夫の不倫相手であるママ友は離婚せず、今の場所から引っ越すこともなく、これまでどおりの生活を続けています。
そんな現状に悔しい気持ちを隠せない相談者は、「周りに不倫のことを言ってしまいたい」と考えています。
ママ友からは「周りの人に話したら訴えるから」と言われているものの、訴えられてもいいから話したいとも思っているようです。ただ、訴えられるとして慰謝料はどれくらいになるのかは気になるようです。
不倫をバラした場合、どのような法的な問題が発生するのでしょうか。また訴えられたとしてどれくらいの慰謝料になるのでしょうか。後藤貞和弁護士に聞きました。
●不倫をバラすのは「法的リスク」だらけ
——不倫の事実をバラした場合、どのような問題が発生しますか。
刑法上は名誉毀損(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)が成立する可能性があります。また、民事上、名誉毀損やプライバシー侵害として不法行為(民法709条)が成立する可能性があり、その場合、損害賠償として慰謝料が発生し得ます。
名誉毀損は人の社会的評価を下げるような具体的事実を不特定多数の人に示すことで成立します。
ある人が不貞しているということを不特定または多数の人に伝えるということはこれにあたりますし、少数の人に伝えただけの場合でもそこから不特定又は多数の人に伝わる可能性(伝播可能性)を考慮して、やはり名誉毀損が成立する場合もあります。
プライバシー侵害の場合は、公開されていない私的な情報で、一般的な人なら公開してほしくないと考えるだろうといったものを漏らすと成立します。
——慰謝料が発生した場合、どの程度の金額になるのでしょうか。
被害者が個人である場合、10万円~50万円程度ということが多いかと思いますが、実際には行為の内容や生じた被害の大きさ等にもよりますので、100万円以上の慰謝料が認められることもあります。
——相談者はママ友から訴えられても構わないと考えているようです。
現在の日本では、配偶者の不貞相手に対する慰謝料請求が認められています。ママ友に対する責任追及は慰謝料請求という形で行うのが法的に許容される手段です。
ママ友に対する名誉毀損などが成立すれば、相談者がママ友に対して慰謝料を支払わなければならなくなってしまいます。
また、不貞の慰謝料請求の立証に失敗すれば、あなただけが慰謝料を支払うという結末すらありえます。まして、刑事事件になれば、相談者が負う社会的なダメージはママ友の比ではありません。
ママ友を許せない気持ちは理解できますが、不貞を言いふらすことには決して小さくない法的リスクがあります。ママ友に対する感情は不貞の慰謝料請求の中で解消していくことを検討するのが賢明でしょう。