浪費癖のある妻が、家事そっちのけで「FX」(外国為替証拠金取引)にハマってる——。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者の男性によると、妻は働きもせず、家事もせず、朝7時から夜中の3時過ぎまでFXをやっているそう。その元手について、妻は「自分の資金だ」と言い張っているようです。
一方、男性の月給25万円すべてが妻名義の口座に入れられており、通信費も電気代もその口座から出しているため、男性は、妻がFXができるのも「自分のおかげだ」と考えています。
男性としては、お金の行方が気になるようで「収益が出た場合は共有財産になるのか」「損失が出た場合は自分が払う必要があるのか」と心配しています。法的にはどうなるのでしょうか。川見未華弁護士に聞きました。
●元手となった資金の内容次第で変わる
——FXで収益が出た場合、その稼ぎは夫婦間でどう扱われるのでしょうか。
民法上、婚姻中に自己の名で得た財産は、その者の「特有財産」となると規定されていますので、原則として、取得者の財産となります。
もっとも、離婚をする場合には、婚姻中に取得した財産が、夫婦の「共有財産」として、財産分与の対象となるか否かが問題となります。FXの稼ぎが財産分与の対象となるかは、「夫の稼ぎを元手にしていた場合」と「結婚前からの預金を元手にしていた場合」とで、結論は異なります。
——夫の稼ぎを元手にしていた場合はどうでしょうか。
夫の稼ぎは、夫婦が婚姻中に形成した財産として、夫婦の「共有財産」となります。そのため、夫の稼ぎを元手にして得たFXの稼ぎも、原則として夫婦の共有財産となり、財産分与の対象となるでしょう。
ただし、妻の特別な努力や能力によって高額の資産形成がなされたといえる場合には、折半ではなく、妻の取得割合が高くなることもありえます。
——では、結婚前からの預金を元手にしていた場合はどうでしょうか。
その場合、妻の婚姻前からの貯金は、妻の特有財産として、財産分与の対象外となります。妻が、独身時代の預金を元手にFXで稼いだ場合は、原則として、その稼ぎは財産分与の対象外となるでしょう。
ただし、妻の特有財産の維持に夫が寄与しているといえる場合には、財産分与の対象となることもありえます。具体的には、妻がFXに没頭でき、稼ぎを維持できたのが、夫の稼ぎや支えがあったからだといえるような場合です。
——相談者は損失が出てしまった場合についても心配しているようです。
妻がFXで損失を出してしまった場合には、原則として、妻固有の債務であり、夫は支払い義務を負いません。
例外的に、妻名義の債務であっても、民法761条が定める夫婦の「日常家事債務」(結婚生活を送る上で生まれた債務)に当たれば、夫も責任を問われます。
しかし、「日常家事債務」とは、一般的な家庭生活を送るうえで必要となる生活費などを想定しており、FXで出した損失が、「日常家事債務」と認められることはほとんどないでしょう。