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「妻から離れろ」不倫相手の会社に突撃する配偶者たち…退職の強要、殴りつけるケースも 法的問題は? 
写真はイメージです(Mai / PIXTA)

「妻から離れろ」不倫相手の会社に突撃する配偶者たち…退職の強要、殴りつけるケースも 法的問題は? 

社内不倫をしていることがバレてしまい、不倫相手の配偶者が会社に乗り込んでくることもあるようです。

弁護士ドットコムにも「相手の奥さんに不倫がバレて、奥さんが会社に怒鳴り込んできました。社内ほぼ全員に私達の交際はバレました」「不倫相手の旦那が会社に乗り込んで来て、多くの社員の前で殴られました」などの相談が複数寄せられています。

中には、「退職しろ」と迫られる場合もあるようです。

既婚女性と社内不倫していたというある男性は、「彼女の夫が突然会社に乗り込んできて、『会社を辞めて妻から離れろ』と言ってきました。要求に応じるべきなのでしょうか」と相談を寄せています。

会社に乗り込んだり、退職を迫ったりする行為に法的に問題はないのでしょうか。澤藤亮介弁護士の解説をお届けします。

●正攻法から外れている…「犯罪」にあたる可能性も

ーー今回のケースのように、不倫相手の夫が会社に乗り込んでくる行為は法的に問題ないのでしょうか。

本件のような不倫の場合、不倫された夫は、妻の不倫相手「個人」に対し、妻との不貞行為を原因とする慰謝料請求を行い、夫として被った精神的損害を慰謝料という「金銭」で償うよう求めることが、法律上の本来あるべき形です。

そのような観点から今回のケースをみると、不倫相手の夫の行動は正攻法から外れているといえます。

相談者は「不倫相手の夫が突然会社に乗り込んできた」と言っています。仮に今後、毎日のように会社に乗り込んできたり、一日に何度も電話をかけてくるなど、ご相談者や勤務先への「嫌がらせ」がエスカレートした場合、その方法や回数によっては、民事上の不法行為にあたる可能性があります。

ーー刑法上の「犯罪」にあたる可能性もあるのでしょうか。

あたる場合もあります。嫌がらせの程度が、ご相談者や勤務先の業務を妨害するほどであれば「業務妨害罪」に問われる可能性があります。

また、勤務先に乗り込んで上司に害悪を告知(脅迫)し、上司やご相談者にむりやり面会や謝罪をさせれば、強要罪に問われるかもしれません。

●要求どおり、退職しないとダメ?

ーー相談者は、不倫相手の夫に退職を迫られています。要求通り、会社を辞める必要があるのでしょうか。

さきほど述べたとおり、今回のような不倫トラブルは、法律上は、不倫相手の夫との「慰謝料」の問題に尽きます。

不倫の事実を知った勤務先が、懲戒処分として解雇する可能性もありますが、不倫を理由に解雇するかどうかについて、判例は基本的に慎重な立場です。

不倫はあくまで「私生活上の問題」であって、「原則として懲戒の対象とはならない」という判断が多くみられます。

たとえ、不倫相手の夫との慰謝料をめぐる裁判で相談者が敗訴したとしても、裁判所から相談者に対して「会社を辞めろ」という判決が出ることはありません。

勤務先が解雇処分をおこなわない限りは、ご相談者は、不倫相手の夫の要求に従って会社を辞める必要はないでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

澤藤 亮介
澤藤 亮介(さわふじ りょうすけ)弁護士 向陽法律事務所
東京弁護士会所属。2003年弁護士登録。2010年に新宿(東京)キーウェスト法律事務所を設立後、離婚、男女問題、相続などを中心に取り扱い、2024年2月から現在の法律事務所でパートナー弁護士として勤務。自身がApple製品全般を好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。

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