「不倫について夫を問い詰めたところ、家に帰ってこなくなりました。どうすればいいですか」。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられています。
相談者は夫が不倫していることに気づきました。そのことを夫に問い詰めると「離婚したい」と言われたそうです。相談者が離婚を拒否すると、夫は「それならば別居しよう」と提案してきました。
相談者が別居にも応じられないと言うと、夫は仕事を理由に外泊をするように。精神的に不安定になった相談者は数日間友人宅へ身を寄せましたが、夫は不倫相手と同棲するようになり、家に帰ってくることはありませんでした。
相談者が夫に「帰ってきて」と頼んでも、夫は「法的根拠があるならば帰ってやるよ」と答えるのみだといいます。
夫を強制的に自宅に帰宅させることはできるのでしょうか。菅野朋子弁護士による解説をお届けします。
● 強制的に夫を自宅に帰らせることはできない
ーー同居義務に違反しているとして、夫を強制的に自宅に帰宅させることはできますか。
民法では、夫婦の同居義務が明記されています(民法752条)。今回のケースを考えるにあたっては、そもそも、夫が同居義務に違反しているかどうかが問題となります。
夫婦関係が修復できないほど破たんしている状態で、一方が同居を拒否し、その意思を変える可能性がない場合などは、夫婦が同居していなくても同居義務違反とはなりません。
今回のケースではこの点が微妙なのですが、夫が「やっぱり同居する」と意思を変える可能性がないほどの状態に至っているのであれば、夫婦関係が破たんしているとして、そもそも同居義務違反にはなりません。
仮に同居義務違反になるとしても、「同居しなさい」と、裁判所が強制執行することはできませんので、強制的に夫を自宅に帰らせることはできません。
●場合によっては、「円満調停」という方法も
ーーもし、「配偶者が家を出て行ってしまったが、婚姻生活をやり直したい」という場合にはどうすればよいでしょうか。
このような場合は、円満調停を申し立てられます。これは、夫婦関係を円満にやり直すために、夫婦が話し合うことを目的とした家庭裁判所における調停です。
もっとも、調停はあくまでも当事者同士の合意で成立するものであるところ、円満調停をおこなう場合は、すでに別居をしていて婚姻関係がこじれてしまっているケースがほとんどです。したがって、「同居して円満にやり直しましょう」という合意に至ることはなかなか難しいでしょう。
仮に夫が同意したとしても、先ほど説明した通り、強制執行はできません。もし、「一緒に住むと同意したのに別居が続いている」など、同意した通りにならなくても、なすすべがないということになります。
円満調停は、極めて有効な手段というわけではありませんが、お互いに夫婦関係を見直すきっかけにはなります。申立てをしてみるというのも一つの手段だと思います。
(弁護士ドットコムライフ)