離婚を決意した専業主婦の女性にとって、悩みの種になりがちなのが、経済力のない自分でも子どもの「親権」がもらえるかどうかという点だ。親権の行方について悩んでいる専業主婦の女性から「不利で勝ち目がないのでしょうか?」という相談が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
結婚5年目というこの女性には、医師である夫との間に生まれた男の子が2人いる(4歳と1歳)。夫とは会話も性交渉も少ないうえ、モラハラ発言に悩まされている。さらに義理の親との関係も深刻で、姑には「あんたのせいで鬱になった。反省しなさいよ!」と、罵られたこともある。頼みの綱であるはずの夫も「家族の序列関係が分かっていない。1 主人の両親、2 主人、3 子ども、4 嫁だ」と、妻をかばうどころか、追い討ちをかけてくる始末だ。
そこで「離婚を考えている」という相談者。「経済面では夫が有利。医師である夫が金でなんとしてでも子どもを取っていく事例はありますか? 私は不利で勝ち目がないのでしょうか?」とたずねている。経済的には夫が有利にみえるが、妻が専業主婦の場合、親権を争うときに不利になったりするのだろうか。離婚の問題に詳しい村上真奈弁護士に聞いた。
●親権の決定に「経済力」は重要ではない
「専業主婦だから親権をとるうえで不利、ということはありません。親権判断において、経済力はあまり重視されていないからです」
村上弁護士はこう述べる。では、親権を決定するうえで、なにが重視されるのだろうか?
「裁判所は親権判断において、次のような基準を持っています。
(1)監護の継続性:主に子どもを養育してきた親の監護を継続させる
(2)母性優先:乳幼児の場合は、母性的な役割を果たす親を優先させる
(3)子どもの意思の尊重(おおむね子が10歳以上の場合)
(4)兄弟姉妹の不分離:兄弟姉妹は分けない
(5)面会交流への寛容性:他方の親と子どもが会う機会を設けているか
(6)その他:監護補助者の有無、経済力、監護の開始に違法性がないかなど
これらの基準は、専業主婦の方の場合、結果的に有利になることが多いです。
特に、重視されるのは(1)の「監護の継続性」です。
(2)の「母性優先」は、子どもが乳幼児である場合は重視されます。(3)の「子どもの意思の尊重」は、子どもの年齢によって重要度が変わってきます。また(6)の「その他」は、補充的なものといえるでしょう」
これらを踏まえ、村上弁護士は「ご相談者は親権をとるうえで、有利といえるでしょう」と指摘する。
「ご相談者は専業主婦であり、これまで主に育児をやってきたものと思います。ですので、お子さんを連れて別居ができれば、親権者になれる可能性は高いです。
お子さんが4歳、1歳と小さいので、この点でも母であるご相談者は有利です。
経済力がない点は、ご相談者の努力に加え、夫からの養育費、行政からの補助等で補えれば、十分です。
専業主婦だから不利ということはありませんので、自信を持って親権を主張してください」
村上弁護士はこう説明していた。