「いざというときは、駆け落ちしちゃえば3〜5年で離婚成立できるよ」。このように知人に言われたという女性が、弁護士ドットコムに相談を寄せています。
相談者は不倫中です。相手は中学1年の子どもがいる既婚男性。男性は、妻と離婚するために話し合いをしているようですが、うまくいっていないとのことです。
友人の話を聞き、相談者は彼と駆け落ちすれば、相手は離婚できるのでは、と期待しているようです。そこで「駆け落ちして、奥さんといっさい連絡を取らなかった場合、何年で離婚が成立するのでしょうか」と相談者は聞いています。
相手が離婚に応じない場合、駆け落ちをしてしまえば離婚はできるのでしょうか。離婚問題にくわしい上将倫弁護士に聞きました。
●駆け落ちした場合、彼は「有責配偶者」となる
ーー相談者は、駆け落ちすれば、彼は妻と離婚できるのではないかと期待しているようです
「妻子がいるにもかかわらず、女性と関係を持ち駆け落ちをしたということになると、相談者と交際相手の不倫が婚姻関係の破綻の原因を作ったと認定されてしまうことになるでしょう」
ーー「婚姻関係の破綻の原因を作った」と認定されてしまった場合、どうなるのでしょうか
「不貞行為など、婚姻関係の破綻原因を自ら作り出した者による離婚の請求は『有責配偶者からの離婚請求』と呼ばれています。
有責配偶者からの離婚請求は、基本的には認められません。例外的に認められるためには、別居が相当長期化していること、未成熟の子どもがいないこと、離婚が認められることにより相手方配偶者が過酷な状況に置かれないことなどが必要であるとされています」
●「駆け落ちしちゃえば3〜5年で離婚成立」することはない
ーーどの程度の別居期間があれば、離婚が認められるのでしょうか
「事案によって様々ですが、純粋な(一方的な)駆け落ちケースで3〜5年程度で離婚が認められることはおそらくないでしょう。婚姻期間や年齢にもよりますが、最低限10年近い別居期間が必要です。
また、子どものことを考える必要もあります。交際相手の子ども(中学1年)が成人して独立している必要もあります。この点からしても、3〜5年の別居期間ではとても足りないということになります」
ーー駆け落ちしてしまえば、3〜5年で離婚が認められるというわけではないのですね
「はい。駆け落ちして3〜5年の間別居したからといって、有責配偶者からの離婚請求が認められることは基本的にはありません。
まして、駆け落ちをして相手方配偶者といっさい連絡をとらないなどということになると、不貞行為のほかに『悪意の遺棄』であるとして、さらなる有責性を追及されるおそれもあります。その場合は、離婚に必要な別居期間がさらに長くなったり、慰謝料が高額化したりするおそれがあります。
なお、駆け落ちしたとしても、交際相手が妻や子どもの生活費を支払う義務が消えるわけではなく、離婚が成立するまではその支払いをする必要があります」